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#6 対話は続くよ、どこまでも〜わたしたちの民主主義/『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』特別企画

対話型の街頭演説「青空対話集会」で、市民とのコミュニケーションを行う立憲民主党の小川淳也さん。衆院選が終わってからも続く対話集会の様子を、和田靜香さんがコツコツ記録していきます。対話の先に何が見えるのか?『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』とあわせてお楽しみください。

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3月1日(火曜日)晴れ

 ロシアによるウクライナへの侵攻が始まり、話題の多くも「軍事力」にまつわることが多かった5回目のオンラインによる「青空対話集会」。冒頭、小川淳也さんから、
「信じがたい気持ちです。力に依って国際社会の現状を変更していくことを許せば許すほど、世界の秩序は不安定になります。速やかな撤退、早期の和平を望みます。国内においても国防の問題を考えていかなければなりませんが、片や突出した議論はこうしたときこそ慎重にならなければなりません」
 という話があった。

 そしてさっそく、対話へ。この日は参加者が少なくて59人。質問したのは12人。

1  世界に対して平和のメッセージを言いたい。
2 ワクチンの問題で副反応に苦しむ人が国内にも6~7千人はいるはずだが(注:質問者さんの申告数で根拠は不明です)、科学的な証明が難しいことで放置されている。政治判断としてどう救うのか?
3  憲法9条はどう守っていくか? どういうスタンスでいくのか?
4 れいわ新選組が国会の「ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議」に反対したが、れいわさんに賛成してもらえるよう、働きかけて欲しい。
5 立憲民主党の広報力の不足について。
6 日本はロシアとウクライナに対話を促す役割を平和国家として果たして欲しい。
7  自国を守るために核武装は必要か。共産党との候補者調整(衆議院選挙)への総括は終わってるのか。
8  国民民主党が政府予算案に賛成したが、今もまだ国民民主党とは共闘してやっていけるという考えか?
9  この対話集会は意義があるが、同時に少人数での対話の機会も設けて欲しい。
10 参議院選挙での争点は護憲、改憲にあると思う。戦略はどうするのか。
11 日本のコロナ対策を専門家をきちんと招いて整えて欲しい。
12 参議院選挙、野党で予備選をやって欲しい。

私はとにかく戦争がこわいんです

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 参加者が少なかった今回の対話集会。最初、質問する方も少なくて、3の「憲法9条はどう守っていくか? どういうスタンスでいくのか?」と、質問をした方も、「今日はまったく質問する気はなかったんですが、2人目の方の質問が終わり、手をあげている人をチェックすると、あれ、誰もあげてない! じゃあ、私が聞いてみようかなと思って手をあげました」と、サッととっさの判断で手をあげて質問したそうだ。

 質問3の方、たまたまツイッターで「発言したよ」と書かれていたので伺ってみたのだが、ある意味、「質問をする」ということ自体のハードルは下がってきているのかもしれない。前はもっと「国会議員に質問する」なんてこと、ちょっと戸惑うことだったでしょう? それがそうでもなくなってきたように思える。

 それで、その方に、なんで憲法9条のこと、戦争のこと、質問したんですか?と重ねて聞いてみた。ちなみに、質問全文は、「国内でも反戦の抗議行動が行われたりして、私も先日行きました。しかし、こういう中でも安倍元首相や橋下徹さんなどが『日本も核を持て』とか言い出して、もってのほかだと考えます。そこまでいかなくても『日本でも軍拡を考えなきゃいけない』と一般の方も大勢言うようになるのが怖いです。私は日本共産党にこれまでほとんどの選挙で投票してきていますが、それは反戦への誓いがブレないからです。今この戦争が始まった中で、9条をどういう風に守っていくか、日本の憲法を大事にしながら、この情勢の中で、どういうスタンスを日本はとっていくか? 小川さんが今考えてることを教えてください」というもの。

 で、どうして、こういうことを質問したの?

 「私はとにかく戦争がこわいんです。私の両親は2人とも昭和一桁生まれで戦争経験者です。父は学徒動員で、軍需工場で働き、母はたくさんいる兄弟を連れて疎開しました。そういう話を聞きながら大きくなりました。
私が小学生のときの担任の先生は、空襲で学校の近くの川が遺体であふれた話をしてくれ、違う年の担任の先生は戦時中に犬たちがどんな目にあったかを描く『マヤの一生』という本を毎日少しずつ朗読してくれました。また大学院の恩師は広島で被爆されたときの体験を語られました。

 私は殺されたくないし、誰も殺したくないし、誰も殺してほしくないです。でも戦時中は殺すことが善になりますよね。そんな事態にならないようにあげられるときに声をあげなきゃいけないと思います。

 近所には自衛隊に入っているお兄ちゃんがいます。うちの子と遊んでくれるような、優しい人です。この前『敵基地攻撃能力』ってのは相手の国の領土に入って攻撃するんだと岸信夫防衛大臣が言っておられましたが(注:岸信夫防衛大臣は2022年2月16日、自衛隊機が他国領空に入って軍事拠点を爆撃してミサイル発射を阻止する手段を持つことを「排除しない」と話した)、それは自衛隊がするんですよね? そんな危ない目に、そのお兄ちゃんをあわせたくないし、そもそもそれは自衛の範囲をはるかに超えてる、と思います」

 なるほど。ご自身、たくさんの戦争体験談を聞かれてきて成長し、戦争反対が自分の中でしっかり根をおろしておられる。そんなものに、敵基地攻撃能力だとか言って、自衛のため?と言いながら、近所のお兄ちゃんを戦わせたくない! あたりまえだ。

武力行使は自衛としてどこまで許されるんだろう

 では、この方に対する小川さんの返答を。長いです。

 「今のご時世を踏まえると、きわめて重要なご指摘で、落ち着いて議論をしないとなりません。私見に寄らざるを得ないのですが、日本国民に限らず世界の人たちがこれだけ力の行使の現実を目の当たりにして、非常に不安で、自国の防衛について頭をめぐらしておることは当然で、必要なことだと感じています。

 気をつけなくてはいけないのは、ここで、突如として核兵器の共有論などおっしゃる方もいらして、それには『冷静に!』と申し上げたいと思っております。

 違いもよく整理したいと思いますが。ウクライナはアメリカやヨーロッパを中心とした集団安全保障の枠組み、NATOに加盟していない状態でしたので、こうして攻撃にさらされた場合、各国は後方的な支援を行うことはできても直接的な軍事行動で対抗する環境下にはありません。

 片や日本は賛否両論あると前提にしてアメリカとの同盟関係下にあり、専守防衛路線をとってきた。具体的に言うと、他国への攻撃力はアメリカにゆだね、自国の防衛能力は最低限日本で保持する。そういう戦略的役割分担をとってきました。

 ですから、ウクライナと日本がアメリカを中心とした集団安全保障の枠組みでは同じ環境下にはないということは冷静に頭の隅においておく必要はあるとおもいます。共産党さんがおっしゃる、軍隊のない国際社会という理想には共感します。警察さえ必要ない社会があれば、それもまた理想ですよね。だけど、現実はそうはいかないので一定の『国内における治安維持と、国際社会における最低限の防衛能力』は今の政治日程からははずせない。日米安保の廃棄や自衛隊は違憲とする根本的なお立場は共産党さんに今後お考えいただくことも必要だと思います。

 さらに解説したいですが、専守防衛原則は『自衛的戦力は保持するが、攻撃的戦力は保持しない』ということに貫かれています。攻撃的戦力とは『長距離爆撃機、弾道ミサイル、攻撃型の大型空母』など。その3つを日本は保有していない。私自身、私見ですが、アメリカを中心とした集団安全保障の枠組み内に日本はあり、その裏表で様々な貢献を行っている前提で、ここにきて突如として攻撃力を備えるとか、専守防衛の枠組みから半歩も一歩も踏み出すことを議論すべきとは、思いません。現状の枠組みの中で、日本としては専守防衛を旨として、自国防衛のための最低限の実力を整えておく。他国から疑いの目を向けられるような核装備、攻撃的兵器などには慎重であるべきです」

 長くて難しい話でしたよねぇ~。小川さんからのこの返答を聞いて、質問3の方、どう思いましたか?とさらに聞いてみました。

 「緊張していたのかいないのか? 小川さんの話にはなかなかおいつけなかったです。ただ、私もそうですが、『武力行使は自衛としてどこまで許されるんだろう』というのは考えるのが難しくて、揺れると思います。もし、少しでも小川さんを揺らすきっかけになっていたら嬉しいです」

 という。質問3の方は、自衛としての武力行使について深く考えられておるのですね。一方で小川さんは「日米安保の傘の下で、専守防衛を守る」と考えている。違うようでいて、共に積極的な武力行使をすることはありえないと、考えているのは共通していると思う。ただ、質問3の方は「いつも共産党に投票する」とおっしゃっているので、日米安保の傘の下にあることにも疑問を持たれているのかもしれない。この部分こそ、選挙における野党共闘でも問題になる点で、私たちそれぞれがより考え、議論していけたら、実りある対話ができるのかもしれない。

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みんな自衛と言って核を持つんですよね

 そして、この話は質問7の「自国を守るために核武装は必要か」にも続いていった。

 これに対する小川さんの返答は、

 「核兵器は、持つべきだという立場にありません。立憲民主党としてそうであり、また自民党も含めてそうです。自民党内には色々おっしゃる方もいますが、日本は『非核三原則』が国是となっていますから、これに直接、異を唱える政党は存在しないのでは?と思います。議論が出始めていることは理解しております。

 現在、(第二次世界大戦における)戦勝5大国にのみ核兵器の保有が暗黙の前提として認められており、今回の国連におけるロシアの非難決議(ウクライナに侵攻したロシアを非難し、即時撤退を求める決議案)はロシアの拒否権で、国連安保理で否決されたわけですが、戦勝5大国のみに拒否権が与えられている戦後の国際社会の構図はどうなのか?という議論がこれから重要だと思います。

 核を持つべきだという議論にも理屈がないとは思わないですが、核不拡散体制の例外として北朝鮮やイランでも開発が進んでると言われている国があります。では、日本や国際社会が北朝鮮やイランをどう見てるか?ということにも自覚的である必要がありますね。

 日本はエネルギーから食料まで、かなりの部分を輸入している国ですから、国際社会と調和的/平和的な交信なくして成り立たない国です。軍事的安全保障は極めて重要ですが、食料、エネルギーの安全保障を含めてトータルで考えたときに、単に核武装が物事を解決するのか? 複眼的な物の見方が大事だと私は私見ですが感じております」

 そうそう、ほんと、そうだ。安全保障は何も軍事的な視点だけでなく、食料からエネルギーまでトータルに考えなくてはならない。なんでもかんでもすぐに核を持て!なる単眼的な見方じゃ、ダメ。これ、すごく重要なことじゃないのか?

 これに対して質問7の方がさら問い。ここから短い対話が小川さんと行われた。

質問者さん「私は共産党の主張がいちばん分かりやすくていいんです。政党が理想を持たなければ、何を持てばいいのか」
小川さん「私も軍隊のない社会が理想だと思います。ただ、それを現実の公約に掲げるには、国際社会も国内も、現実は甘くないという認識を持ったうえでなければならないと思います」
質問者さん「核兵器はどうですか?」
小川さん「核兵器に関しては先ほど申し上げたように、持つことがただちに国益になるとは考えられません」
質問者さん「自衛のためであってもですか? 橋下徹さんの言うように」
小川さん「みんな自衛と言って、核を持つんですよね。北朝鮮もそうです」
質問者さん「そうですね(笑)」
小川さん「自衛のために核を持つというのは、自分たちがどうしたいというのもありますが、核を持つことで国際社会が日本をどう見るか?が、同じく問題です」
質問者さん「自衛云々じゃなく、核は持たないと宣言すべきです」
小川さん「非核三原則があります。国是です」

 質問者さんが「核を持たないと宣言すべきです」と求めたのに対して、小川さんは「非核三原則」を重ねて言い、国是なのだから破られることはない!と、再度、強く申し述べた。

ウクライナ侵攻の不安の中で行われた対話

 「非核三原則」は1967年12月11日に、衆議院予算員会で、当時の佐藤栄作総理大臣が表明したものだ。

 「核は保有しない、核は製造もしない、核を持ち込まないというこの核に対する三原則、その平和憲法のもと、この核に対する三原則のもと、そのもとにおいて日本の安全はどうしたらいいのか、これが私に課せられた責任でございます」

 その後、1971年11月に「非核三原則(持たず、作らず、持ち込ませず)を守るべきだ」とする衆議院決議が採択された。これは国是であり、日本が守っていくと誓った。その後も非核三原則についてあれこれ言う人はまだまだ大勢いるけれど、その度に私が思うのは、あなたは核兵器を持つとか持ち込ませるとか、広島の平和記念館の中で言えますか?ということだ。あの、たくさんの原爆の痕跡の中で、それを大きな声で言うことが出来るのか?と私は問いたい。わずか77年前の日本で、一瞬で大勢の人が原爆で亡くなった。その後も後遺症に大勢が苦しんできた。その人たちの前でそれを言えるのか?を聞きたい。

 戦争や核兵器に関する対話が、ウクライナへの侵攻が続く不安の中で行われたこと、覚えておきたい。戦争の時代に、市民と国会議員が戦争についてのあれこれを自由に話せるということは、すごく大事なことだと思うからだ。

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