【試し読み公開】学校! 高校生と考えるコロナ禍の365日
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【試し読み公開】学校! 高校生と考えるコロナ禍の365日

左右社
2021年11月15日刊行、『学校! 高校生と考えるコロナ禍の365日』の試し読みを公開しています。全国の小中高に対して政府から臨時休校要請が出され2020年3月1日から私立桐光学園中学校・高等学校は前代未聞の長期休校を迎えることとなった。授業は?部活は?修学旅行は?文化祭は?卒業式は?一年間、学校はこのピンチをどう駆け抜けたかーー。生徒、教員、保護者、カウンセラーらの総勢29名による葛藤と希望の365日。目まぐるしい変化と現場の声を追ったノンフィクション。

99_再入稿桐光学園学校

 桐光学園には教頭がふたりいます。各部署の意見を集約しながら大方針の流れを滞りなく進める過程は大変です。特に今回のコロナ禍のように答えがわからないものに対しては当然さまざまな意見が挙がる。忌憚のない意見がコロナ対応に関する会議では次々と出ました。意見のぶつかり合いは激しく、苦しくもありましたが「意味のある会議」だったと思います。

 保護者からも多くのお問い合わせやご意見をいただきました。私はメールを一括して確認し、振り分けていく係だったので、どのメールにも目を通しました。訊きたいこと、伝えたいこと、要望の言葉はどれも重みのあるものでした。家庭のことを思い、子どものことを心から思っている。ただの批判はなく、どれも「こうした方がいいんじゃないですか」といった提案でした。教員も必死で考え抜いて、状況とともに答えや方針を変えていく。「ああ、学校って生きているんだな」と感じました。

 二〇二〇年コロナで休校になったときの悩みはそれまで経験したことがないものでした。正直に話すと、最初はほんとうに呆然としました。何をどうすればいいのだろう?と思って。

 あの時期、あの時点で会議での議論が激しくなったのは当然で必要なことだったと思っています。よく私たちは生徒たちに言います。「答えのない問いにどうアプローチしていくかが大事だ」と。今回それを私たち教員が問われているのだと感じます。

 私は日本史の授業も数コマ担当しています。コロナ禍で初めて授業ができたときは嬉しかったです。やっと授業がやれた!と涙が出そうでした。

 対面で授業をしたいと願うのは、リアクションや些細な変化を知ることが重要だと思うからです。個人的な話ですが、学生時代、学校へ行くのがつらかった時期があります。いじられるというか、他人との関係性がうまくいかず、学校が嫌で嫌で仕方がなかった。いま考えると自分にも妙なプライドみたいなものがあって、それが他人に伝わっていたのかもしれないとも思います。自分でつくった固定観念でものごとを見て他人との間に壁をつくっていた。あるときふと周囲を見渡して、小さい自分に気づいたら急に気持ちが楽になり、力が抜けました。

 自身が学生だったときに学校が好きでそのまま教員になった人は多いと思います。でも、自分には少し違う経験がある。ひとクラス四十人いて、四十人のなかでひとりかふたりでも、うまくいかない子がいたら……。私はその生徒の方を向けばいいなと考えています。そのために、必ずしも心地よかったわけではないときのことも忘れないようにしたいと思います。

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超大吉
左右社
2005年設立の、人文書・文芸書を中心に刊行する出版社です。左右社という社名は書家の石川九楊先生に付けていただきました。亀のかめ吉を飼っています。