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#14 対話は続くよ、どこまでも〜わたしたちの民主主義/『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』特別企画

対話型の街頭演説「青空対話集会」で、市民とのコミュニケーションを行う立憲民主党の小川淳也さん。衆院選が終わってからも続く対話集会の様子を、和田靜香さんがコツコツ記録していきます。対話の先に何が見えるのか?『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』とあわせてお楽しみください。

5月14日(土曜日)曇り @横浜市・桜木町駅前広場

 久々に行きました、青空対話集会。ゴトゴト湘南新宿ラインと京浜東北線を乗り継いで。この日は7月の参議院選挙の立候補予定者と小川淳也さんが一緒にやる。そのため、地元の市議会議員や県議会議員、党関係者らが集って何やら仰々しいというか、有楽町駅前などで小川さんだけでやってきた、これまで私が見てきた対話集会とは雰囲気が違い、なんとなく戸惑う。むろん元々この青空集会は、昨年10月の衆議院選挙時、小川さんの地元・香川1区から始まったものであり、選挙とつながっているのは当然なのだけど、議員ズラリとみなさまの前に勢揃いで並びます、小川政調会長様おねがいします!といった進行に、居心地の悪さを感じてしまったのは否めない。

 それでもなんでも手を挙げて質問……しかも批判もいっぱい!する人たちが大勢いたことは、なんと心強いことか。「国会議員に聞いてみた。」がもはや当たり前すぎることになっている。1年ぐらい前、こんなこと、あり得たかな? すごい。それで質問です。

1 週刊誌報道で小川さんが「公職選挙法はクソ」と言ったとあるが、どう考えているのか?
2 対話とは単に聞くだけでも発信するだけでもなく、対話から方向性や解決策を見出す取り組みだと理解しています。
3 オレンジ・アクションという集会に参加して感じたことです。妻が夫に不倫されて離婚、子どもを夫に連れ去られて会えないのは理不尽だと思う。子どもの養育に関する法律がおかしい。小川さんのお考えを教えてください。
4 立憲民主党は核ミサイル保持について議論の必要はないとしているが、議論すらしないのはどうかと思う。議論をして賛成反対を聞きたい。議論してはいけないのはなぜ?
5 コロナ対策でワクチンそのものには反対しませんが、ワクチンの後遺症に苦しむ人がいるので立憲民主党は少数者の命を守る党として後遺症の症例データの収集分析を公約としてほしい。
6 今は野党がバラバラだが、野党支持者間でも喧嘩になっている。分断がある。立憲の中谷一馬さんとれいわ新選組の高井たかしさんが対談する動画があり、いいので参考にしてほしい。
7 参議院選挙の投票の略称を「民主党」にしたことが間違えている。国民民主党も「民主党」で、おかしい。また昔の野党は徹底的に与党に反対していた。もっと反対してほしい。小川さんは総理大臣になりたいなら、身体全体でなるんだと表現してほしい。
8 憲法改正するかしないかの話になっているが、何をどう変えたいのかが重要で、一個一個とりあげ、簡単に決まるようにしないでもらいたい。
9 国全体の財政の話を誰にでも分かりやすくできる国会議員がいない。日本は今、赤字国債を発行しまくり、次世代への負担が大きすぎると自分は思っている。こういうことをきちんと説明してほしい。
10 立憲民主党には天下国家論、政治哲学が見えない。どういう優先順位をつけて、どういう国家を目指すのか? また我々のような年金受給する高齢者への国会での議論が少なすぎる。年金は減り、物価は上がるばかりで、もう少し年金生活者についての話し合いを国会でしてほしい。
11 昨年の総選挙をボランティアで手伝ったが候補者は落選。その後、その方は政界から引退することになり、応援団が宙ぶらりんになっている。次の総選挙はもう始まっているという気概で次を考えてほしい。

「公選法はクソ」報道の真相

 いきなり最初の質問1から、ド厳しいものだった。

 「週刊誌の報道で小川さんが『公職選挙法はクソだ』とおっしゃったとありますが、これは公選法の『金持ち(の候補者)を有利にさせない』という趣旨を理解しての発言でしょうか? また公選法を守りながら選挙を戦っている候補者や支援者、私も選挙のボランティアをしていますが、そうしたボランティアなどへも、(立憲民主党の)執行部としてどのようなお考えをお持ちでしょうか?」

 選挙応援を兼ねた集会なのに、いや、だからこそ、忖度なし! すばらしい。小川さんの青空対話集会は、こうでなきゃっと私の戸惑いを吹き飛ばしてくれた。遠慮はいらない。市民と政治家、私たちは車の両輪であり、いっしょに回っているのだから。

 しかし小川さん、質問を聞いて台の上で体を折り曲げ、膝を抱え、苦笑し、「本当にごめんなさい」と、平謝りに謝る。そして「言いわけではないのですが、事情を申せば週刊誌の記者さんから突然に電話があって、雑談的な感じでついつい思うところをしゃべってしまい、そのまま記事になってしまいました。私自身の脇の甘さで反省です」と言った。

 ただ、公職選挙法に関しては、「みなさんが遵法精神で選挙を戦っているのは確かで、そのことには敬意を表しますが、時代に合わないものでもあります。選挙が近くなっても、のぼりに名前が出せないとかいろいろな規制が多く、遺物のような規制は見直していかないとならないと考えます。本当に悪いのは選挙買収であり、名前の浸透をはかって訴えをじっくり続けていくことはあたりまえのこと。それが出来ない今の公職選挙法は間違えていると感じています」と話した。

 公職選挙法が謎すぎて理解できない!ということについては私の本『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』に色々書いた。私も公職選挙法は改正してもらいたいと考える。1950年(昭和25年)に制定され、今まで何十回と改正されてきてはいるそうだが、今の法律だと、たとえば無名の若い人が立候補しても、その名前を書いたビラを選挙期間中にポスティングして広めることもできない。となれば、現職のオールド層がぜんぜん有利!とか。何それ?なことがまだまだ多すぎる。

 ビラには証紙というシールを貼るとかも。シールって何? その手間だって、たとえば支援者が少ない無名の候補者には重荷になる。候補者の資金力によって選挙活動に差がつかないように極力配慮をするというのが公職選挙法の趣旨らしいが、結局のところ、お金や知名度がある人がだんぜん有利なのだ。

 2013年にはネットを使った選挙活動が出来るように改正もされたが、十分とは言えない公選法。変えてほしい。でも、「クソ」はだめですよね、小川さん。私もそう思ってはいますが。はい。

「対話」とは何か

 そして質問2での「対話」の解釈。発言された方は「対話とは単に聞くだけでも発信するだけでもなく、その対話の中から方向性や解決策を見出す取り組みであり、誰かが決めたことをただ実行するのではないやり方です。じゃ、誰がそこに関わるか? ひとりひとり生活をする人と、専門的な視点を持つ人。それが交わって対話していく」と話されて、そうだそうだと思った。

 会の冒頭で小川さんも改めて対話集会とは「あくまでここはおてんとうさまの下、いっしょに考える場であり、いっしょに社会の新しいやり方、ただしいやり方を共に話し合う場であることを確認させてください」と言っていた。

 この日の会場は駅前広場。広場で政治家と市民がワイワイと考えを交わして、社会の方向性を考えていく。なんだかまるで古代ギリシア、民主主義の誕生のときのようだ。……「ようだ」というが、むろん、古代ギリシアはこの目で見てないのはあたりまえだが。

 しかし、ウクライナでは武力で国土と主権が侵されるという毎日が続き、世界で民主主義が危機にあることは重々実感している。この集会の翌日5月15日は、沖縄が日本に復帰して50年にあたる日だった。沖縄では辺野古新基地反対派の知事や市長が誕生しようが、県民投票でノーを言おうが、政府は粛々と建設を進め、安倍政権以降ではノーを言えば交付金を減らすという、あってはならない手を使ってきた。民主主義は私たちの目の前でも蹂躙されている。

 広場での小さな対話は本当に微かな灯りかもしれない。微かな灯りをなんとかしてともし続けてほしい。

 それから質問3。最近ネットで目にすることがときどきある「共同親権」に関することだったが、小川さんは「ご夫婦の関係が破綻することはあるでしょうが、そのときにお子さんに一番いいように円満に親としての権利が行使されることが望ましい。とはいえ、旦那さんからDV被害を受けられていた女性もいらっしゃり、その方々の立場からすると共同親権を主張されることは、それを口実としてかつての支配関係に引き戻される恐れがあるので、この議論は簡単に進めないでほしいというお声をいただいています。難しい問題で、ここで簡単に結論は申し上げられないです」と話した。

 私もこれにはまったく共感する。子どものためにと共同親権を強引に進めるのではなく、DV被害の女性の声をしっかりと聞くこと、大事にしてほしい。

例年3500億円ほどの「予備費」、”コロナ対策”名目で11兆円に

 ところで、前回の青空対話集会の話をしたい。
 そうそう、以前はこのnoteで小川さんが行うすべての青空対話集会を取り上げていたけど、そうしてると書くものがダレてくるので、最近は私が興味を引かれた回のみを取り上げている。あしからず。

 それで、noteに取り上げていない前回の5月8日の集会(宮崎市)で、
 「コロナ関連予算として11兆円の予備費が使途不明だという報道を見ましたが、それ以上のことがまったく分からないと聞きました。これは異常なことだと思います。何に使われたのか教えてください」
という質問は気になってメモっていたので、それについてのみ、記させてほしい。その質問に対して小川さんはこう答えている。

 「本当に大事なご指摘です。年間の一般会計予算は今、だいたい100兆円なんですね(2022年度で107兆6千億円)。ところが2020~2021年度はコロナ補正予算でもう100兆円ぐらい積まれた計算になっています。

 そして(その中で)予備費は、予備費とは国会の審議を経ずに、政府の判断で何に使ってもいいお金で、これまではふつう3500億円ぐらい、リーマン・ショックのとき(2009年)でも1兆円ですから、それを2020年に政府が「コロナ予備費」という枠組みを作って10兆円にしました。これは普通ありえないことです(注:2021、22年にはコロナ予備費としてそれぞれ5兆円を盛っている)。

 その行方が追えなくなってるのは、政府の一存で使えることにくわえて、当初予算と補正予算などですでにあるお金に、予備費をまぶしこんでる、ごちゃまぜに使って管理して、区別がつかなくなってる、そういうことです。

 本来、議会というのは勝手な課税や予算の使い方を許さない『財政民主主義』が存在意義です。しかし、それに平気で土足で踏み込んでいくのが安倍さんのやり方、法制局長官の人事とか、憲法9条の解釈とか、あらゆる規範を壊してきた。そしてそれを正せない岸田さんのやり方です。

 政府は今またコロナ、物価対策を予備費でやると言っています。その予備費が足りなくなれば、また予備費を増やしますと。私どもはきちんと予算項目を立てて国会審議を付してくださいと言っていますが、野党の弱体化にも大きな原因があって、政府は何でも思い通りにできると考えています。11兆円の使途不明金を追いかけることはそんなことで事実上、不可能です。もう、あらゆるものにうまくまぶされている結果として困難です。予備費という国会審議を経ない予算立てを阻止していく以外に道はありません」

 なんてことだろう。予備費って、そうか、使途が政府の裁量で勝手に決められて、まるで、それって、お小遣い感覚? 何それ? 信じられない。それじゃ、まるで王様が、我ら庶民が収めた年貢を好き勝手に使ってるみたいじゃないか。私たちには確定申告で細かく何に使ったかを出させておいて、ひどすぎる。2021年、私たちに10万円が配られたけど、その総額は12兆円だった。じゃ、もう一度、私たちに10万円配れたじゃないか! ありえない。ひどい。

 このことを詳しく報じたのは「日本経済新聞」(4月5日と22日)。

 それによると、予備費とは本来「大規模災害などの緊急時に備えて計上するもの」であり、「政府が状況の変化に応じて迅速に執行しやすい利点はあるが、自由度が高い半面『国会軽視』にもなりかねない」とある。小川さんが言うとおりだ。

 そして3月25日の衆議院予算委員会の理事会で野党の出席者から「巨額の予備費は政府・野党が夏の参院選目当てに自由に使える財布だ。議会制民主主義の基盤を揺るがす」と批判していたという。なんてこと。財政民主主義が破綻。日本は自民党王国なのか?

 ちなみに記事によると、使途が不明なのはコロナ予備費12兆円(11兆じゃないんですね、12兆なんですね)のうちの9割。用途を正確に特定できたのは6.5%の8千億円だけなんだという。

 ふざけるな!と特に叫びたいのは、12兆円のうち、地方創生臨時交付金として配られた3.8兆円で、「同交付金をめぐってはコロナ問題とこじつけて公用車や遊具を購入するなど、疑問視される事例もある。自治体が予備費を何に使ったかまで特定するのが難しい」とする。地方に政府がお金をばらまいて、”まあまあ、好きに使いなよ”としていたのなら、それって、野党議員が指摘したという”参院選目当て”にしか思えないじゃないか。素人の私だってすぐ分かる。

 こんなに大変な問題なのに、このことに関しての報道は、このときの日経新聞以外ほとんどなく、正直私もこのときに初めて聞いた。

 みなさんもこれ、気になっていますよね? なんで、もっと、ちゃんと報道されないの?何に忖度しているんですか? そう大きな声で尋ねたい。

横浜と言えば中華街だが、これは池袋の台湾屋台ごはん


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