2020年春、新宿御苑で涙した話
2020年3月、世界中が新型コロナウイルスの流行でパニックに陥っている。
日本政府は小中高の休校を決定しイベント自粛を要請、人々は未知の病に疑心暗鬼になり、世の中は今までにない閉塞感が漂っている。
そんな中、「友達と新宿御苑に行ったら入園料が無料だったよ。」という話を夫から聞いて、翌日一人で行ってみることにした。
先日小池都知事が「花見も自粛するように」と要請していたが、新宿御苑は環境省の管轄だから関係ないということか。
「桜の見頃という繁忙期に通常500円の入園料を無料にするなんて粋な計らいだな」と感心していたら、「チケット購入の行列による新型コロナ感染を防止する」という目的のためだという。
どんな理由であれ、娯楽を奪われた人々にとって、美しい桜の風景を無料で楽しめるのはありがたいことに違いない。
私が新宿御苑に向かったのは、3月21日の日曜日の午後。
気持ちの良い晴天で20度はありそうな、まさに散歩日和と呼べる陽気だった。
新宿門の前を並ぶとチケットを求める長蛇の列はなく、みんなスイスイとフリーの改札を通過していく。
この「新宿御苑の入園料無料」という告知は公開されておらず、手前の門ですら貼り紙はなかった。
しかも、世の中は自粛モードだし観光客は少ないのかなと思っていたが、私の予想は外れた。
例年と変わらず芝生に座って、思い思いに桜を眺めている人々の姿を見ると、そのいつもと変わらない平和な風景に、思わず涙が溢れた。
普段の生活でいつ感染するかわからない。
もしかしたら自分は無症状の感染者で、気付かないうちに誰かを感染させているのかもしれない。
そんな恐怖と、日々人々は闘っている。
まだ治療法が確立されていない感染症を広げないために、不要不急の外出を控えることは当然のことである。
でも、感染のリスクがほぼないとされる屋外で、花見をするくらいのささやかな楽しみは残しておいてほしい…心からそう思った。
寒がりで冬が大嫌いな私にとって、桜の開花は春の訪れを教えてくれる幸せのシンボルである。
今年はじっくり見られないかもと思っていた桜を十分に鑑賞できて、
「今、私は生きている!!」
と、心から感動した。
そして、前記事で書いた「死を意識した経験」があるからこそ、
「今年も生き延びて、来年の桜も見てやるんだ。」
と強く心に刻んで、新宿御苑を後にしたのであった。
参考:新宿御苑の新型コロナウイルス感染症対策のお願い
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