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《ヴェーゼンドンク歌曲集》

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ワーグナー作曲《ヴェーゼンドンク歌曲集》の訳詩です。全5曲プラス、イゾルデの愛の死です。
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《ヴェーゼンドンク歌曲集》訳詩──5.夢

《ヴェーゼンドンク歌曲集》訳詩──5.夢

ねえ、どんなに素晴らしい夢が
私の感覚を捉えて離さないのでしょう
それゆえ空虚な泡沫ではなく
荒涼とした空虚へと消え去るのか

夢、それはいつでも
毎日美しく花開き
そして天からの報せと共に
人々を通じて穏やかに巡る

夢、それは気高い光のように
魂へと沈む
そこに永遠の像を描くために
すべての忘却、唯一の想い!

夢、それは春の太陽が
雪から出た花々に口づけする時のように
それゆえ予感もしない至

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《ヴェーゼンドンク歌曲集》訳詩──4.痛み

《ヴェーゼンドンク歌曲集》訳詩──4.痛み

太陽よ、お前は毎晩泣く
美しい目を赤くして
海の鏡に沈みながら
早い死がお前を捉える時

それでもなお、古い華やかさの中からお前は甦る
薄暗い世界の栄光よ
お前は朝に新しく目を覚ます
誇りを持った勝利の英雄のように

ああ、それをいかに私は嘆くべきだろうか
どのように、私の心は激しく、お前にあこがれるか
太陽はそれ自身ひるまなければならないのか?

そして死だけが生を産み
痛みだけが至福の歓びを与

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《ヴェーゼンドンク歌曲集》訳詩──3.温室にて

《ヴェーゼンドンク歌曲集》訳詩──3.温室にて

高くアーチ型になった葉の王冠、
エメラルドの天蓋、
遠い地からやって来た子供たち、
私に言って、なぜ嘆くのか

黙ったままおまえたちは枝を傾け、
風のなかへと兆しを描く、
そして苦悩の黙した証人は、
甘い香りを天へと漂わせる

切望するあこがれの中で、
おまえたちは腕を拡げて伸ばす、
そして妄想に取り付かれながらからめとる、
荒涼とした空虚という小さな恐れを

そう、私は知っている、哀れな植物よ、

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《ヴェーゼンドンク歌曲集》訳詩──2.とまれ!

《ヴェーゼンドンク歌曲集》訳詩──2.とまれ!

ざわざわ音を立てる、ごうごう音を立てる、時の車輪よ
おまえ、永遠を測る者、
遠い宇宙に輝く領域、
おまえたちは地球を取り囲んでいる
原初の永遠の創造よ、とまりなさい
成長なんてたくさん、私をそのままにしておいて!

そばに留まれ、創造の力よ、
原初の概念、それは永遠に創造を続ける!
息吹を止めよ、衝動を鎮め、
ただわずかな時間でいいから黙れ
高まる脈動よ、脈打つのをやめよ
終われ、神の意志による永

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《ヴェーゼンドンク歌曲集》訳詩──1.天使

《ヴェーゼンドンク歌曲集》訳詩──1.天使

子供の頃 遠い昔のこと
天使について語るのを聞いた
高き天上の尊いよろこびを
地上の太陽と換えるという

不安な心が心配の中にあり
世界を前に人知れず苦しむとき
静かに心が血を流して
溢れる涙の中に息絶えてしまいたいとき

焦がれる心の祈りが
ひたすらに救済を希うとき
そこに天使が降りてきて
心を優しく天上に引き上げる

そう、私の心に天使が降りてきた
そして心を輝く羽根に載せた
天使は導く、すべ

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