見出し画像

正解はひとつじゃない

数日前に娘からもらった風邪がこじれて、熱が下がりきらず、息も苦しく、ずっと寝込んでいる。
体が動かない時ほど、頭の中身はぐるぐる回るもので、よしなしごとをnoteに綴りがちだ。わかっちゃいるけどやめられない。

今日は、ピアノを学んでいる方々に、興味深い話をお伝えしてみようと思う。

以前「先生を変える」という記事を書いた。
昨年、5年間お世話になった師の元を離れ、あるピアニストさんのレッスンを単発で受けていくことにしたのだ。

新旧の師、どちらも素晴らしい方たちだ。
新しい師はソロリサイタルも行うほどの現役演奏家だし、旧師は指導歴30年の大ベテランで、業界への顔も広い。

過渡期にあり、レッスンに同じ曲を持ち込むことになった、メンデルスゾーン 無言歌 Op.30-6。
この指導が二者で全く異なった、ということをお伝えしたいと思う。

以下、旧師の指導をA、新師の指導をBと記す。

冒頭のイントロ部分

A 歌いすぎるな。舟歌の抑揚はコンパクトに。
B 深いブレスからのニ音を大切に。

歌い出しの部分

A 舟歌のカンタービレは朴訥に。
B 続く同音は音の方向を変えて十分に歌う。

中間部 クライマックスへ向かう部分

A クレッシェンドは極力後方でまとめて。
B V−Iの流れと共にクレッシェンド。

クライマックスから展開への繋ぎ部分

A 早めにディミヌエンドしてpに戻す。
B この小節の初めはffを維持。

長いトリル

A ppのトリルなので24を使う。23では強い。
B 24は弾きにくいから23で。十分に歌う。

終わりへ向かう導入部分

A 左のオクターブのバランスに意識を。
B 右の和音の響きの中に左を入れ込む。

3分あまりの短い曲で、これだけの違いがある。
何が言いたいかというと、ピアノの先生に習っている=必ずしも自分の目指す演奏になるわけではない、ということだ。

導入期の技術を学ぶ程度ならまだしも、中級以降の音楽性を学びたい場合、先生選びは非常に重要になる。

もしあなたが若いのなら、また音大などで専門的に学んでいるのなら、今後複数の方に師事して音楽性に幅を持たせていくことができる。

しかしそうでない場合、師事する先生は大抵一人に絞られるはずだ。経験上、一旦師事した方から別の方への変更は、大変な気苦労とリスクを伴う。大人ゆえに、だ。

先生の指導通りに弾けるとか弾けないとか悩む前に、まずその指導に納得できるかどうか、その演奏が自分の音楽性に合っているかどうか、見極める目(というか耳)を持たなければならない。

人それぞれ、好きなピアニスト、受け付けないピアニスト、どちらでもないピアニストがいると思う。指導者もまた然り、なのではなかろうか。
ここをすっ飛ばしてる人が多い気がしている。とても。

ピアノの正解はひとつじゃないが、自分の正解はひとつのはずだ。自戒を込めて。