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学校に住まう先生の話

私が通っていた高校ではある先生が住んでいるらしい、という噂があった。確かに数学研究室に行くと(数学の先生だった)、彼の机だけ異常に荷物が多く、奥には簡易テントのようなものが見えた。彼の車だけ「何処かから避難してきたのではないか?」と思えるほどトランクが荷物でパンパンだった。私は彼から教わったことは無いから何も知らないけれど、とにかく説明が分かりにくくその割にはテストが多くて、生徒からは人気のない先生だった。確かに彼が心から笑っているところは3年間通して1度も見たことがなかった。
 日付変わって昨日、友達と飲んだ後高校まで散歩することになった。高校を卒業して3キロ太った私は通学路を歩きながら、そりゃあこんな道毎日歩いてたのがなくなったら太るよな、と思った。教材だけではなく、ドラムのキック、スネア、チャイナシンバルのスタンド、チャイナシンバルをカートで引っ張りながら歩いていたのだからそれは凄い消費体力だったのだな、と今になって実感する。そんなことを考えながら歩いてついに学校に着いた。
 彼は絶対に居た。数学研究室だけ夜の10時過ぎなのに電気が着いている。文化祭期間でもなく、特別忙しい時期でもないのに。というか高校の先生ってそんなに遅くまでいるものなのか。みんなで「絶対にいるね」 「てか光熱費とか払ってんのかな?」と話した。校門も閉まっていなくてセキュリティ的にどうなの、、?大丈夫、、?と思ってしまった。私が通った高校の先生は変わり者が多かった。地学の先生は「石バトルだ~!」と言って鉱物をぶつけ合い「ね!この石はとっっても固いんでふ!」とワクワクしながら話していたし、数学の先生は「どうでしょうこの曲線、素晴らしいでしょう」とにこやかに話していた。地理の先生は一番最初の授業で「僕の好きな地形ベスト3」を発表していた。1位はカルデラだった。現代文の先生は毎日鳩に餌をあげていた(駅のホームで!)。 
 あと2ヶ月もすれば新入生にも「数学研究室にいるK先生って学校に住んでるんだよ。」という噂が広まることでしょう…


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