雑記#5 ほたる

数年ぶりの実家付近は、私が知っていた頃とは大きく変わっていた。
ここを実家と呼ぶのは本意ではないのだが、まあそうなのだろう。
大きなタワーマンションが建てられて麓には多くの商業施設、駅前には大きなロータリーができてバスやタクシーがしきりに出入りしていた。

通院まで、時間があった。
私は馴染みの喫茶店に入り、仕切られたスペースへと腰を下ろした。
ふと、目を挙げると「全席禁煙」の文字。
明らかにここは、喫煙を目的として作られたスペースだった。扉を閉めれば、ここは密閉された空間になる。
だが、世間はそれを良しとはしないようであった。

「オリンピックだからねえ。」
友人との会話を思い出す。
全国を旅して気がついたけれども、札幌は喫煙に関してかなり寛容な街だった。
寒さに震えて、暖を取るようにライターに火を灯す。
そこには多くの交流があった。

けれど、彼らは姿を消しつつある。
都市開発は更に進む。
ほたるは、二度死ぬ。

助けてくれると、嬉しいです。