誰にも望まれぬ妊娠

誰にも望まれてないのに生まれてきてしまった。
そんなような気がする。
たしか親は生まれたとき
祝福してくれたような気がする。
今日だって仕事をして誰かの役に立った。
それなのに生きててこんなにつらい。

朝起きたらツイートができなくなっていた。
youtubeもここ数日は見るのを辞めていて、
例えば巨大なwebサービスのいくつかから、ある日突然banされてしまった時のことを想像した。
スマホの電話帳には前職の上長への緊急連絡先だけがあって、親の電話番号すら入ってない。しょうがないので本を読もうとKindleを開くと本棚は空っぽでAmazonのアカウントが凍結されたことを思い出す。
それでスマホに入っているアプリを眺めていると、昔ハマっていたソーシャルゲームのアイコンをそこに認める。ひさしぶりにパズドラでもするかとアプリを開くと、魔法石が100個配布されており、何も考えずにゴッドフェスを回す。それからこのガチャの結果が当たりなのかハズレなのかを調べようとするが対話型aiの検索機能は有料版のみの提供でもう検索ができないことを思い出す。果たしてあのゴッドフェスは引いてよかったのか、当たりのキャラは引けていたのか、何もわからないままパズドラを閉じた。
仕方がないのでテレビをつける、なんで暇空茜のことを報道しないんだよとかいいながら、すぐに私は惰眠に堕ちていった。ツイッターがないので私が見たかった真実はもうどこを探しても見つからなくなってしまった。
やがて陽が沈み、夕闇に人生が淡く溶け出していく感覚に絶望を抱きながら、あまりにも静かな狂気が正常な感覚を取り込んでいくまさにその瞬間に。
業務用スマホが鳴り出す、それはteamsからの連絡だった。そうそう、社用のマイクロソフトはまだbanされていないんだったとひとりごつ。
よかった。
もうそこに静かに狂える人はどこにもいなかった。

誰に望まれて生まれてきたんだろう。
何が楽しかったんだっけ。
そんなことばかり考えてしまう。
仕事を辞めたら果たして本当に楽になるのか、
それすらわからないのに。
ニートの時はもう少し前向きに狂ってたような気もする、前向きと後ろ向きどっちを向いても狂ってるんだから、どっちがいいかなんてわかるはずもない。
とりあえずもう少しお金が欲しいと、
それだけが確かで本当に切な思いなのですが。

誰にも望まれない妊娠に憧れる。
周囲から反対され、父も、腹を痛めた母にすらも、
生まれることを望まれなかった妊娠。
いっそ誰にも望まれずに空蝉に生まれ堕ちたら。
きっとなんの気兼ねをすることもなく
思うがままに世界を全てを憎むことができる。
そうやって自由奔放に修羅るには手に余るほどの祝福としがらみがしがらむ冬の木枯らしで、枝の上で身を寄せ合う雀達を眺めながら、出勤と退勤と即射精を繰り返す順繰りの輪廻を重ね合わせ。
命の重みをズーンと必要以上に感じてしまう毎日でした。

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