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7.撮影初日 大学

バンタンさんは前述の通り、協力の枠を超え
ありとあらゆる撮影のしやすさを提供してくれた。
まず、教室のシーンを撮影するのに多くの
学生エキストラを
そして、メイクスタッフを派遣してくれた。
これはスタッフ一同、大変助かった。
そして何よりも彼らはそこへ通う学生だ。
空気が出来ている。動きもスムーズ。
まずは教室の準備をはじめる。
教室は4シーン
・誠が穂乃果にランチを誘われるシーン
・美鈴が修太に話しかけてカフェのチラシを渡すシーン
・誠が修太に穂乃果と付き合ってると報告するシーン
・美鈴が修太を探しに来るシーン
いずれも長回しの1シーン1カット。
周囲の学生の動きが肝心だった、少しでも入りやはけのタイミングを
間違うと重要なセリフにかぶってしまうからだ。
かなり演出部に動きの自然さや無駄のなさを求めたのでどう映ってるかは、実際に確認してほしいと思う。
普通の監督なら、面倒なので簡単に2ショットとカットバックで
撮影するところだと思うが
教室のシーンで拘ったのは、カメラがただ教室においてあるという空気。
そういう距離感でただ映ってるという空気だった。
俳優部も困惑したかもしれない。
あまりにもカメラが遠いからだ。恐らくどう映ってるのか想像できない距離だったと思う。
(舞台挨拶で話したように、だから大原優乃が
モニターチェックしたいと希望したのかもしれない)
撮影は順調に進み、教室のシーンは無事に終える事が出来た。
一つの難関はクリアしたのだ。しかもまいていた。

教室のシーン

つづいて修太と誠のシーン。これも長回し。
しかも、今回大きなテーマとして取り入れた
修太の背後から手持ちで追うカメラワーク。
この要求はかなり撮影部と照明部、更には演出部を困惑させたと思う。なぜなら全てが映る上に周囲の人が自然に動いてないといけないからだ。
私はこの映画の中でこのシーンを非常に重要視していた。
なので妥協しなかった。
かなりフォーカスと明るさの変化が大きくそれに対処してくれた
撮影の浅津さんには感謝している。
今回、初めて組んだがこのシーンで彼を完全に信頼したのを覚えている。
本当に狙い通りのカメラワークになった。
今回の多数散りばめられた撮影手法の工夫の大きな一つはクリアできた。

修太と誠のシーン

もう一つ、このシーンで私にとって重要だったのは事務員役で出てもらった依田哲哉だ。
彼は日本映画学校の同級生にして
私が生まれて初めて作った自主映画の主演俳優だった。
あれから22年。
こうしてプロの現場で演出できるのは本当に感慨深かったし
嬉しかった。彼が出番を終えたときは自然と抱き合っていた。

事務員役の依田哲哉

そして学校のラストシーンは
階段のシーンだ、これもまた手持ちの長回し
階段を美鈴について上がって、更には駆け降りる美鈴を追いかける1カット。
本当に難しい要求だったと思うが浅津さんはよりよくなるアイディアを出して
くれた上にこの難しいカットを難なく撮り終えた。
そして、これで学校のシーンは撮り終えて
ナイターのロケーション撮影へと準備を進めていった。

学生たちの記念撮影

ちなみにこの日
主題歌の久保あおいさんも現場を訪れていた。
現場の空気を見たいという理由で来てくれていた。
真剣に撮影の様子を見ていたのを覚えている。
その現場の空気を吸って
あの『呼吸』が生まれたと思うと何だか嬉しい気分だ。

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