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詩「さあちらいと」

刃物のよな

お月さまよ

みつめないで

そんなふうに

家を出てく

わたしのこと

とがめないで

とどめないで

夜霧のなか

足音消し

石畳の

ひかる道を

棒のような

足を前へ

ロウのような

白いのどに

あたる風は

今夜かぎり

とぎれた糸

吹かせていく

降りてきたの

こんな夜に

つまさきまで

こおる夜に

お月さまは

防波堤の

向こう側の

闇の海に

ぽかり浮いて

ぴかり見てる

探さないで

さあちらいと

照らさないで

急がないと

お月さまは

無人の世に

家を出てく

わたしみてる

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