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映画のようにはいかなかった

周りが見えなくなるほどの恋を経験したことのある人は多いはず。

わたしもその1人だった。

20歳で出逢った年上の彼は、私の世界を広げてくれた。
恋愛にのめり込むタイプでなかった私が、彼の影響を大きく受けた。

美味しいお酒、旅すること、スノーボード。

その中でも一番影響を受けたのは映画だった。
元々映画好きだった私は、付き合う前、彼と映画の話で盛り上がった。
一番初めはハリーポッターを全作見直そうという話から始まり、そこからどんどん親しくなり、仕事終わりに二人で彼の好きな映画を借りて、ホテルで見るようになった。もちろん一つのベッドで横になって見るのだけれど、彼は手も繋いでこない。
後何作見たら彼女になれるだろう?なんて考えていた。

そこからいつしか付き合うようになった。
2人で一体何作の映画を見ただろう。

声のトーンがわからないのが嫌だから吹替では見ないだとか、この映画は家でいいけどこの映画は映画館で見たいだとか、こだわるところが似てるのがしっくりきていた。

少し変わった彼は、繊細で、でもしっかり愛情表現をする人だった。

まだまだ未熟で若かった私は、彼のことをとにかく一生懸命好きだった。
一生懸命が故に、自分の人生の中で彼の比重が大きくなり過ぎた。

繊細な彼が落ちてしまう時、引っ張られるように落ちてしまった。
引き上げてあげることができず、お互いが一生懸命になって、辛くなって、離れることを決めた。

この前見た映画では、辛いことを乗り越えた2人はハッピーエンドだったんだけどな。

映画のようにはいかなかった。

その後何度彼を思い出しただろう。
でももう戻らないとお互いに決めていた。

それでも私もその後いくつか恋をした。

その都度相手のことは好きだったけれど、彼のように私に大きな影響を与える人ではなかった。
それは私があの頃より大人になり、もう私自身が形成されているからなのかもしれないけれど。

彼との別れからずいぶん経った今、もう思い出すこともなくなった。

でも、映画を見ていると、ふと
映画は人生や感情を豊かにするよね。なんて話していたのを思い出す。

彼と別れてから、私は一体何作映画を見ただろう。
素敵だな、よかったな、と思った作品を彼は見ただろうか。

それは、未練だとかそんなんではなく、懐かしいような、愛おしいような言葉にし難い感情だ。

いつかまた。
そんなことは思いもしない。
彼もどこかで素敵な映画を観ていればいい。


#忘れられない恋物語

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