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「学問のはじまり」を感じる時

早稲田大学の学祭に呼ばれて少し話をしてきた。FMwasedaというラジオサークルの番組に、ゲストで呼んでもらったのだ。
運営スタッフはもちろん大学生たち。彼ら彼女らのご両親より、おそらくぼくの方が年上。そんなオッサンに声をかけてくれるのは、実は藤井青銅なんかより、ぼくが関わっているオードリーのオールナイトニッポンという番組に興味があるわけだろう。
あ、それに対してスネている、なんてことはないですよ。まったくない。それどころか、とても嬉しい。
ふだん見ている聞いている番組やエンタメ作品の、裏側や裏方がちょっと気になるというタイプの人が、ぼくは大好きなのだ。だって、ぼく自身がそうだったから。

「電波ジャック2019」という企画だ。ラジオサークルらしく、当日は番組形式でゲストを呼び、その模様をミニFMでキャンパス内に飛ばす。スタジオではなく、大教室に観客のお客さんを入れていた。公開生放送の形態ですね。
お客さんはほぼ全員、ぼくの背後にうっすらと見えるオードリーの姿を楽しみにきていたわけだ。そうでなきゃ、200人ほどの教室が埋まるわけがないもの(実はこういうの、過去にも経験がある。以前ウッチャンナンチャンのオールナイトニッポンを担当していた時の、ぼくの本のサイン会もそうだった。慣れているのだ)。このへんの内輪感が実にラジオ的で、ぼくは好きなのだ。

内容は当然、放送作家や本の作家という仕事のこと。お客さんが目にするエンタメの裏側で、スタッフたちはこんなことを考え、こういうことをしているんだよ、という具体例を少しばかり話した。
その反応がとてもよかった。よく「目が輝く」という表現をするけど、人はなにか興味を引くものに出会うと、本当に目が輝き、本当に体が前のめりになるのだ。
実は以前にも似た経験がある。数年前、山口県立大学で、学生たちになぜか「ゆるパイ」のスライドショーを行った時がそうだった。「うなぎパイ」や「きしめんパイ」なんて土産菓子を、ぼくは形態や素材や地理、歴史、文化でインチキ学術的に分類・分析して講義風のエンタメにした。この時も、学生たちの目がキラキラと輝いていくのを実感したのだった。

おこがましい考えだが、ぼくは、
「学問のはじまりとは、きっとこんな瞬間なんだろう」
と思っている。
今まであまり気にしなかったモノやコトを、いろんな角度からのアプローチで考えてみると、そこに知的興味にあふれる面白い世界があることを発見する。自分が知らなかったことを知るのは楽しいのだ、新しい見方を得るのは面白いのだ。
やがてそれが年月を経ると「〇〇学」なんてモノモノしい名前になる、と思っている。つまりぼくがいつもへらへら語っているものに、「放送作家学」「企画プロデュース学序説」「社会言語フリートーク論」とか「比較ゆるパイ学」「比較食文化人類学」とか、そういう名前をつけると、ぐっと学問ぽくなるのだろう。もっとも、そうなるとしだいに退屈になっていくのだけれど…。
ともかく、「学問のはじまり」というのはいつも「面白い」のだ。お客さんの方はもちろん、話をする方も。
楽しい機会を与えてくれた早稲田のサークルの学生さんたちに感謝だね。

実は今月もう一つ、(学祭ではないが)個人的なつながりで別の大学にもおじゃますることになっている。学生さんたちに、また「学問のはじまり」の「面白さ」を感じてもらえたらいいなあ。

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