都より愛をこめて~スタジオの片隅で

最近の「東京都と国の確執」「東京の首都機能」「地方の独自な動き」「渋谷スクランブル交差点のガラ~ンとした様子」……などを、ぼくはヒヤヒヤ、ドキドキしながら見ています。
むろん、多くの方は新型コロナでそう思っているでしょう。ぼくもそうです。が、それとはまったく関係ない別の理由でも、ぼくはヒヤヒヤ、ドキドキしているのです。

それは、これ。
NHKFMの「青春アドベンチャー」というドラマ枠で、今度「00‐03 都より愛をこめて」というドラマを放送します。NHKのページには、こんなあらすじが書かれています。
【あらすじ】
時は20XX年。21世紀に入り加速した東京への人と富の一極集中。一方で、対極にある地方の破綻。両方を解決するため国会で遷都法案が通った。ただし、新首都は今後の国民投票によって決まる………

詳しくはドラマを聞いていただくとして、このお話は当然、東京が舞台。ところが、その東京がいま激変しているのですよ。
もちろん、ドラマですからフィクション。それに近未来のお話です。今の現実とは関係ない。とはいえ、企画時の去年6月はもちろん、実際に書いていた今年初めにも、まさかいま日本がこんな風になるとは思いもしませんでした。なので、オンエアが近づくにつれ、内心ヒヤヒヤしているのです。

主人公役は、声優の梶裕貴さん。「進撃の巨人」で有名ですね。
こういうメッセージをいただいてます。 
演じる時、「こういう感じはどうでしょう?」「こうやった方が伝わりますか?」などいろんなアイデアを出して、全体を引っ張ってくれました。

そして、ヒロイン役は、木﨑ゆりあさん。元SKE48ですね。
こういうメッセージをいただいてます。 
慣れないオーディオドラマでしょうが、役作りを工夫してスタジオにきているのがよくわかりました。熱心さが伝わりましたね。

こういうドラマ収録の時は、たまにスタッフの関係者が見学に来ることがあります。この時は、たぶんどこかの番組デスク(なのか?)の女性がやってきました。彼女は、これがどういうドラマかという予備知識はゼロ。内容は何も知らずにやって来たのです(と、のちに彼女自身が言ってました)。

ところが、彼女がしばらく見ていると、みんなが喋ってるセリフがヘンテコです。なにせ作家がぼくですから、当然そうなる。が、彼女は藤井青銅のことなんか知らないわけです。
で、(あれ? なんか妙なコメディね)と思ったらしく、その場にあった台本をめくってパラパラと読んでました。そしてディレクターに、
「これ、めっちゃ面白いドラマですね!」
と声をかけたのです。もちろん、彼女のすぐそばにそれを書いた人間がいるとは知らずに。
こういうのって、作家はとても嬉しい!(これ、つまんないドラマですねと言われないでよかったあ…)とホッとしました。

そのディレクターも、とあるシーンを録りながら、
「なんてアホらしいんだ…」
と声に出して呆れてました。もちろん、そばにはぼくがいます。
コメディの作家にとって「アホらしい」「バカバカしい」「くだらね~」「頭わる~」というのは、褒め言葉なのです。ぼくも、
「アホらしいですよね~」
と笑ってうなづいてました。

そういえば9年前、3.11のあと、たまたま姉と会った時、
「こういう時だから、あなたには楽しいモノを書いてもらいたい」
と言われたのを思い出しました。あの時は何を書いたかなあ…憶えていない。
はからずも今回、なんだか同じような世相の中でドラマをオンエアすることになってしまいました。もちろん、企画時にそんなことは予想もしなかったのですが。
聞いた方に「アホらしい」「バカバカしい」「くだらね~」と笑ってもらえたら嬉しいです。


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