波の伝わり方

たまに仕事で、どこか地方に行くことがある。イベント、収録、取材……仕事の内容はなんであれ、たいてい夕方から早い夜にかけて終わる。仕事を終えてみんなで食事を、というスケジュールを組んでいるからだ。
多くの場合、繁華街の片隅にある店で仕事のスタッフたちと食事。現地の料理に、みんな喜ぶ。

食事を終えて外に出ると、なんだか繁華街全体の光量が落ちている。あきらかに人通りが減り、すでに看板を下ろしている店もあるからだ。
これから飲みに行こうという連中に対し、たいてい現地スタッフが、
「東京と違って、ここは夜が早いですから」
とやや自嘲気味に言うのだ。
「いやいや、これが普通ですよ。東京が異常なんです」
と私はいつも言う。
それは相手の言葉に対する配慮ではなく、本当にそう思っているからだ。

私はお酒を飲まないので、飲みに行く連中と別れ、そのままホテルに戻る。部屋に入ってシャワーを浴び、テレビをつけると、夜のニュースワイドやバラエティ番組をやっている。まだそんな時間なのだ。
ホテルの周囲は静かで、もちろん部屋も静かだ。テレビから聞こえるバラエティ番組の音声だけが賑やかだ。
途中コンビニに寄って買ってきた飲み物など飲みながら、
「そう。夜ってのは、これが普通なんだよなあ」
と私はもう一度確認する。

東京だって、深夜まで人がウロウロしていて「眠らない街」なんて陳腐な表現がピッタリくるのは、六本木、渋谷、新宿などの一部だけだ。
だが、それでも十分、異常だと思っている。地方出身者である私は、どうも馴染めないのだ。もちろん今では、年齢のせいもあるけれど。
とはいえ私は、深夜放送のラジオを長年作ってきた。生放送だ。街をうろつきこそしないが、電波の中で深夜までワアワア言っている。これも同じく異常なのだよなあ、と思ったのだ。

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