手書き神話

『一芸を究めない』という本に入れるつもりだったけど、ページの関係で入れられなかった原稿を、いくつかUPしている。

手書き神話
 
私の周囲の同世代作家は、多くが手書き原稿の時代からスタートしている。
だからみんな…
手書き時代 ※喫茶店時代
→ワープロ専用機時代 ※FAX送信時代とかぶる
→PC時代 ※原稿はプリントアウトする
→PC時代(データ送信) ※まだデスクトップPC
→ノートPC時代(データ送信) ※カフェ時代
→ノートPC&スマホ時代 ※クラウド&LINEやSlackも併用
……という流れを経験しているのだ。

誰もがどこかのタイミングで、
①自分のヘタな文字から解放される。
②直し作業が簡単になる。
…という魅力で、
「これは便利だ!」
と新しいメカに飛びつく。
とはいえ、まだ性能が低く、操作習得で挫折し、
「やっぱり手書きの方がいい」
と悪態をついて手書きに戻る。そしてまた新しいメカが登場すると、
「今度こそ!」
と再チャレンジして……といったことを何度も繰り返してきて、今に至るのだ。

いま世間は急に「リスキリング(デジタル関連のスキルや知識の習得)」なるものを言い出しているが、そんなの遅い遅い! 我々古い作家はずっと前から、リスキリングを繰り返してきたのだよ。
現在、ほとんどの作家が原稿はPCで書いている。みんな技術革新の荒波に揉まれ、時に流されそうになりながらも、なんとかしがみついてきたのだ。最初からPCで原稿を書いてきた世代の作家には、この「淘汰されずに生き延びた」という安堵感はわかるまい。

だから、
「あの先生の原稿、まだ手書きらしいよ」
という噂を聞くと、みんな驚くのだ。驚く理由は、
「新しい時代に対応できないんだな」
ではない。
手書き原稿は、それを誰かがテキストデータに変換する。当然、人件費と作業時間がかかる。それが許されるのは、
「さすが大御所作家だ!」
なのだ。

手書き原稿時代の放送業界には「手書き神話」とでも呼ぶものが残されている。いくつか紹介しよう。

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