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お釈迦様は何も捨ててはいなかった?その①

当時のインド社会から考えるちょっと特殊な(?)出家事情

さて、Sayasayanはいろんな宗教から知られる人々の生活文化がとても好きです。

世界にはいろんな宗教があり、キリスト教・イスラム教・仏教は世界三大宗教なんて言われています。

そんな中で、日本になじみ深いといえばやはり仏教ではないでしょうか。

開祖(宗教を創始した人のこと)ゴータマ・シッダッタは目覚めた者を指すブッダと悟りを得てから呼ばれ尊敬された存在です。(釈迦族の尊者として釈尊・お釈迦様なんて呼ばれたりもしています。)

生まれた時から奇跡的なことを成し遂げており、この世に生まれて7歩歩いた後「天上天下唯我独尊」と口にしたとされています。

でも、こうした伝記の多くは後代の脚色が入っています。

もちろん、それだけすごい人だったという意味ですし、今でも尊敬されている存在である証拠ではありますが、実際のブッダは後代に作られたイメージとはすこ〜しかけ離れた存在であることも事実です。

ということで、今回はちょっとイメージが違う?ブッダのお話を少々。

(ということで、伝説的なブッダがお好きなことはここから先読まないでくださいね。偉大な人物であることは大前提に、あくまでもこんな風に考えることもできるというお話ですので。)

ちなみに、ブッダの生涯についてなら、こちらの書籍が参考になります。

人間としてのブッダについて知ることができる良書です。

中村元著『釈尊の生涯』(平凡社ライブラリー)平凡社, 2003.


出家のタイミング

さて、仏教の開祖ブッダの生涯は結構知っている方も多いかもしれません。

釈迦族の王子(インドでいうところのクシャトリヤ(王族)階級)として生まれたお釈迦様は、何不自由のない生活を送っていました。

四門出遊(東西南北の門から出かけた時に、生老病死という苦しみを目の当たりにする)と呼ばれる経験をして、出家への思いはあったものの、ヤショーダラという妃をめとり、一子ラーフラにも恵まれたとされています。

その後、家庭をもちながら29歳の時についに出家したというストーリー。

夜半に城を抜け出し、最後に愛馬カンタカとの別れといった涙無くして語れないシーンもあるのが出家シーンのハイライトとしてとても有名です。

家族や大事にしていたものを捨てて出家した」というのがストーリーの印象なのですが・・・では実際にお釈迦様ってすべてを捨て去ったのか???

実際のところ、完全に家族などの人脈・王子として得ていた土地や財産etc.すべての縁を一切合切切り捨てた・・・とはどうも言えないようなのです。

そもそも、出家したいと望みながら、29歳まで待たなければならなかったのか?

これは、当時のインド社会のライフプランに大きく関わっています。


当時のインド社会&理想のライフステージ

お釈迦様の生きていた時代は、インドでバラモン教と呼ばれるバラモンという司祭階級が偉い身分制度が存在していた時代です。

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その上、各階級(特にバラモン・クシャトリア・ヴァイシャの上位カースト)は、それぞれの職分に合わせて、理想とするライフステージがあります

基本的に、①学生の時期→家庭を築き後継ぎを育てる時期→後継に家督を引き継いで隠居する時期→死ぬ場所を求めて旅に出る時期といった感じです。

日本でいうところの、良い大学に入って、良い会社に入って普通に結婚して子育てして、自分の家を持って・・・みたいなテンプレートのようなものといえばいいでしょうか。

そして、重要なのはクシャトリア(王族・貴族階級)に属するお釈迦様、実はこの基本的に理想的なライフステージを経験しているという事実!

ライフステージのことを調べてみると、結構具体的な年齢の目安があります。

だいたい、12〜13歳くらいまで養育されると、インドのアーリア人コミュニティの成員として成人式を迎えます。

つまり一族の中で一人前と認められて、学生の時期に突入するそうなんです。

家を出てバラモンのところで、2〜3年くらい集中的に他の民族が知らない勉強を修めます。

その後お見合い結婚のような形で家庭を持つわけです。

そして同じように後継ぎとなる男子を育てあげて一人前にすると、家督を譲るので晴れて隠居の身となる・・・と。


・・・ではみなさん、単純計算してみましょう・・・

12歳+2〜3年+12歳+2〜3年=・・・29年間・・・!??

そうです、多少ズレはあるはずですが、きちんと学生の時期と家庭生活を送る時期を済ませているわけですね。

なんだ、やることやってんじゃ〜ん・・・と冷静になると思うわけです。

悪いことではないですが、世に背をむけたアウトロー感はないですね(笑)

当時のインドの人々を規定していたカースト制度と彼らのライフステージ・ライフスタイルについては、以下の本が詳しいので気になる方はぜひ読んでみてくださいね。

渡瀬信之訳注『マヌ法典』(東洋文庫)平凡社, 2013.

ということで、どうもお釈迦様の出家ライフ=隠居後の第二の人生的なものであったと推察されるわけです。

でも、出家した時は何ももたずに出家したのだからすごいよね!?という声、よく分かります。

金銭に頼らず、人にも頼らず・・・?ということでその辺りのことは、長くなってきたので、その②でお話したいと思います。

とりあえず、釈迦族の王子として立派にやることをやって、余生に入ってから修行を始めたお釈迦様。

意外と地に足のついた人だったのかもしれませんね。





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