#382  プライド

毎年恒例、慶應・明治・早稲田の3校による新人戦。その第一戦となる早慶戦が母校グランドにて行われた。
僕は14番右ウィングとして先発。この年の慶應は有望な選手が数人入部したという情報が入ってきていた。 
母校はラグビー高校日本代表に選ばれ、この世代で最も有名な選手3人が入部しており、その3人は今回不出場。
母校は前半早々からエンジンが掛かり、猛攻。開始10分で3トライを積み重ねた。僕の対面はラグビー高校日本代表に選ばれた選手。
前半5分→オープンサイドでボールが展開され、外でボールを貰った僕は
対面をハンドオフでタックルを交わし、そのまま走り切ってトライ。
その後、母校が慶應新人を圧倒し、大きくボールを動かした。
前半母校リードのままハーフタイムを迎える。
ハーフタイムを挟み、後半も最初から攻撃の手を緩めなかった。
リードしていて思い通りの展開に持ち込めていたことで、チームに油断が生じた。攻撃でミスが目立ち始める。キックミスを付け込まれ、相手バックスのカウンターアタックで大幅な前進を許す。
一度、生じた綻びが段々大きくなり、相手ペースで試合が進んだ。
攻守共に後手に回ってしまい、相手がトライを積み重ね出す。
後半の後半は一方的な展開となり、慶應に圧倒される。
終わってみれば大量得点を許し、大敗。
項垂れる早大新人。
この試合の後に始まるA~Cチームの練習の為、来ていたフォワードコーチが
僕らのところにやってきた。小柄な体で日本代表として激しいタックルを武器に活躍してきたラグビー界でも有名な先輩。
そのコーチは穏やかな表情で早大新人に諭す様に語り掛けた。
早大ラグビー部のプライドを持って戦えたのか。
「この試合で負けた悔しさを忘れない為に、練習をしよう」とそのコーチによる練習が始まった。
練習内容はキックダッシュだった。最初、30m位の距離で始まり、時間が経つにつれ距離が伸びて行き、最後は100m。
終わりの見えないキックダッシュは延々と続いた。
試合で既に疲労困憊だったが、容赦なく行われたキックダッシュ。
1時間以上続く。
続く…
  

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