#372 首の皮一枚

心の支えだった友人Aが新人練脱落。僕は翌日から一人で新人練に臨まなければならなかった。自宅に帰ってから母に弱音を吐き、学校でも同級生に弱音を吐いた。
その時、母は頑張りなさいとは言わなかった。僕は母に励まして欲しかったのかもしれない。
「辞める辞めないは貴方の自由。ただ、1つ言える事は今辛くて辞めたら、今後辛いことがあるとその都度逃げる様になる。逃げ癖がつく。自分で良く考えなさい。」
この一言は僕の心に深く突き刺さった。そして母に言われた言葉を良く噛み締めて考えた。
母の言う事は最もだと思った。僕は今一度気を引き締めて、新人練に臨む決意をした。志半ば無念の脱落となった友人Aも僕が諦める事は望まないだろう。2浪までして合格した上で挑戦した新人練。1週間もせず脱落。
考えに考えて2回目のチャレンジをした新人練。念願の入部まであと少しのところに辿り着いていながら、諦めようとしていた弱い自分。
母の言葉でぎりぎり折れかけた心が再度繋がった。
その後の新人練は厳しいものだったが、受かる迄やり抜く覚悟で乗り切った。新人練の最後の方はようやく人数が絞り切れた為、少し練習の厳しさが軟化した。元監督のOBが新人練の終盤を見てくれ、優しい言葉を掛けてくれた。新人練の終わりが近いことを感じれた。
友人Aが脱落してから約1週間後、新人練を乗り越え、ようやく入部が叶った。
僕は何とか最後の約40人に入ることができた。
入部が決まると週末に入部式が行われる、2年生との試合が行われる。
その日が1年生にとって正式に入部が認められる日となる。
入部式までの数日間は試合に向け、チームを編成しラグビーらしい練習が行われた。僕は14番右ウィングとして試合に出る事になった。
新人練が終わると、それまで口を利いた事にない同期とも話す様になった。
現役で入学した者たちと浪人組との間に隔たりの様なものはあった。
中には高校ラグビー部の先輩が同期になった者もいた。
続く…



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