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#389 カウントダウン

初めて迎える大学ラグビー部の夏合宿。その前に僕は飲み会で知り合った女性との恋を実らせるべく、夏合宿への準備と同様にラストスパートを掛けていた。
当時は携帯は普及しておらず、基本固定電話で連絡を取り合うしかなかった。その子は学校の寮だったので、中々繋がらない女子寮へ何度となく電話を掛けた。
その子はその年のNHK朝ドラのヒロインに似ており、何とかその子を射止めるべく残り少ない長期オフを過ごした。
ようやく漕ぎつけたその子と二人で飲みに行く機会も活かしきれずにやんわりと振られる結果に終わった。
ある意味、夏合宿前に気持ちの整理を付けることができ、僕は夏合宿に集中しようと決意。
自分ではその子への未練を完全に断ち切ったつもりで菅平高原での夏合宿臨んだ。
出発は早朝に東伏見グランドからバス。4年生~1年生まで学年毎に1台のバス。
途中、サービスエリアでトイレ休憩を挟み、昼食は群馬のお店で釜飯。
そして菅平高原へと向かう。
出発当初は賑やかだった車内も、菅平に近づくにつれ段々静かになっていった。菅平高原入口の標識が見えた時にはいよいよ始まるかという緊張感が
車内を埋め尽くした。険しく、急なカーブを描く山道を上っていくバス。
僕は昨年、ラグビーサークル夏合宿で一度来ていたので2度目となる菅平。
ただ、和やかで和気あいあいの雰囲気だった一年前とは全く異なる重たい雰囲気。車内は完全に静まり返っていた。噂や本などで知っていたハードな夏合宿の話。終点が近づくにつれ胸の高鳴りも強くなっていった。
長い1カ月に及ぶ夏合宿がいよいよ始まる。
そうこうしているうちに宿舎となる大学のセミナーハウスに到着。



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