オーロラの方舟

 DI:GA ONLINEさんにて、BUMP OF CHICKENの全国ツアー「aurora ark」の新木場STUDIO COAST公演1日目のレポートを担当いたしました。

 2週目のRIJFに向かう最中に編集部さんからご連絡をいただき、「えええええええわたくしなんかが天下のBUMP OF CHICKENさまのレポートを!?!? わたしなんかで大丈夫ですか!?!?」と動揺が隠し切れなかったです。手が震えてました。

 BUMP OF CHICKENの音楽に出会ったのは高校時代。当時のわたしは、母が開業したペンションの経営がまったくうまくいかず、つねにお金との闘いでした。夢を持つなんてもってのほかで、生命の危機すらありました。

 藤原基央さんの人生哲学が通ったバンプの曲たちは、生きることに不安しかなかった10代のわたしに「どんな闇のなかにも必ず光は射すから」と訴えかけ続けてきました。その言葉を信じて1日1日をなんとかつないでいきました。隠しトラックや隠しジャケットという工夫も、お笑い好きの10代の若者にとって、とてもうれしいものでした。

 BUMP OF CHICKENをきっかけにsyrup16gを知って、syrup16gの流れからMO'SOME TONEBENDERやART-SCHOOLにのめりこみ、ナンバーガール症候群だったわたしはあらためて日本のオルタナにずぶずぶとはまるようになり、BUMP OF CHICKENはどんどん規模を大きくしていき、わたしは音楽ライターになりたいという夢を追って専門学校に入学し、20代半ばのわたしは、藤原さんの人生哲学がなくても立てるように、歩けるようになりました。

 月日は流れ、突如舞い込んだBUMP OFCHICKENのレポートのお話。でも思い返してみると今年はユニカビジョンでたまたまMVを見かけて「うわあ、藤原さん今こんなに色気があるのか」と驚いたり、「わっ、コーストでライブ!? そんなレアな環境で観たいけど無理だよな」とぼんやり思ったり、バンプの情報が日常に飛び込んでくることが多かった。その時からなにかしらのサインがあったのかもしれません。

 レポートを書かせてもらうのだから、ということでRIJFでもライブを観ました。久し振りにバンプを観ただけでなく、おまけにずっと写真だけで観ていた、あんな大自然の大きな空の下に巨大なステージとたくさんのお客さんがいるという非現実的な環境に、多感だった時代のことが如実に身体に蘇ってきてだいぶ混乱しました。

 冷静な判断がなにもできないままその場は終了しましたが、そこでいったん自分のノスタルジーが成仏させられたのでしょう。コーストのライブはだいぶ冷静な気持ちで観ることができました。そしたら、高校生の自分が感じていたバンプの魅力が、今もしっかりと残っていることがわかりました。

 その魅力は進化というよりも深化していて、「わたしは藤原さんの人生哲学に助けられてたと思ってたけど、もっと言えばこういうところに魅力を感じていたんだな」と気付きました。バンドはずっとこの想いとポリシーを大事にして、傷つかないようにしっかりと守りながら歩んできたのだなと思うと、込み上げてくるものがありました。

 たぶんバンプはわたしにとって母校みたいな存在なんだと思います。卒業したけれど、ずっと胸のどこかに彼らの音楽はあった。わたしが夢に向かって走り出すまでの人間に育ててくれた彼らに、「ライターとして9年ちょっと活動してきて、こういうことを思うようになりました」と恩返しのつもりで書きました。わたしなりの批評ができたと自負しております。

 PS. 記念撮影めっちゃいい曲。アレンジも歌詞もメロディもパーフェクトすぎる。


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