真面目な正統派

 「真面目な正統派」。駆け出しの頃からよく言われる言葉である。もともとものすごくネガティブで自分に自信がない人間なのもあり、昔はその言葉に対して「面白みがなくて守りに入った無個性な人間だ」という解釈をしていた。大きなコンプレックスでもあった。

 それ以外にも誤解を受けることが多く、それがいやで何度も抵抗してきた。伝える能力が欠如してるのかなと落ち込むところもあった。だが2、3年前、ふと目に入った吉本ばななさんのツイートが腑に落ちた。

 ああ、誤解されるって、普通のことなのか。それからだいぶ気持ちがラクになった。

 最近は自分の持ち味を生かしているならば、真面目であろうがなかろうが、正統派であろうがなかろうが、どうでも良くなった。自分自身の心が強くなったわけでも、自信がついたわけでもない。ただ、自分の奥にある性質をわかってくれている人がいるという安心感があるからだ。

 SAKANAMONのインタビューが公開された。納品したのはもう1ヶ月以上前なので、どこか他人が書いたもののような気持ちも少しある。読み返してみて、めちゃくちゃ正統派のインタビューだと思った。

 インタビュアーはちゃんと裏方として存在して、だけど押さえるべきところは押さえて、意見を言うべきところは言って、ちょっとつっこんだりなどしている。アーティストはちょっと悩んだところもありつつも、結果的にポジティブなものができたという話をしている。アーティストのお茶目な面も見えるし、曲の話もあれば活動の話もあって、文章にはしっかりと起承転結もある。どこを切り取っても正統派である。

 虹色の綿菓子みたいにインスタ映えもしないし、タピオカみたいに流行ってないかもしれないけれど、しっかり美味しくてお腹がふくらむ。それこそ唐揚げ定食みたいな満足度だ。

 まあでも、面白みのないインタビューだと言われたら、まあそう感じる人もいるだろうなあと思う。でも、それでもいいかな、と思っている。もっとこの路線で精度を上げていきたい。もうちょっとからっと揚げたいなあとか、もうちょっとお肉のサイズ小さくしてみようかなあ、とか。付け合わせ変えてみようかなとか。

 もっともっといいものを書けるようになりたい。まだまだ足りない。もっと文章力も、知識も、観察眼も感受性も必要だ。

最後までお読みいただきありがとうございます。