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予想のつかないこと

疲れて、ちょっと休もうか、どうしようかとカフェの看板を見ていた。すると、知らない女性がやってきて、看板の隣にあったテーブルに置かれた、消毒液にのボトル手を伸ばした。消毒液を使いたい人がいるのに邪魔をしてしまったかと、私はさっと退いた。ところがその女性は消毒液を使うでもなく、ボトルの場所を少し移動させ、その下に敷かれていたマットをめくってくしゃりとさせ、どこかへ去った。

何が起きたのか理解ができなかった。私はただゆっくりとその場を離れることしかできなかった。今、書き起こしてみても、何のためのどういう行動なのか全くわからない。私が邪魔で怒ったのかもと考えてみたが、その人は私など眼中にないようだった気がする。それに私が邪魔だったのならば、その意図を主張する行動は他にいろいろあるはずだ。

私はこういった「予想のつかないことが起きてしまった後の時間」にとても弱い。以前に、背後で知らない人から大きなため息を吐かれた話を書いた。その時も、そんなことが起こるとはまさか思っていなかったので、かなりの間、釈然としない気持ちを引きずってしまった。

この世の全ての物事に意味があるわけではないのだろう。意味のない行動という物もあるのだろう。私の予想外の行動をとった人は、なんとなく消毒液の位置を変えたかっただけで、なんとなくマットをくしゃっとさせたかっただけなのだろう。大抵の場合「なぜ?」という問いから、物事は深まっていくものである。しかし「なぜ?」など問うてはならないことが、この世の中にはあるのかもしれない。問うても返事のない物事が。「なぜ?」と呆気にとられていても、進まない物事が。

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