Sayakanasakana

テレビ局記者、舞台役者を経て現在はフリーランスの通訳をしています。 木皿泉脚本のドラマ…

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テレビ局記者、舞台役者を経て現在はフリーランスの通訳をしています。 木皿泉脚本のドラマと須賀敦子の本が好き。歩く事と、読むことが生きがいです。 日々の振り返りをここでつづっていけたらと思っています。

マガジン

  • 朝の連続テレビ小説 おかえりモネ

    私が書いたおかえりモネについての考察をまとめました。

最近の記事

おかえりモネとアオハライド(後編)⑬

 前回の記事にも書いたように「アオハライド」は双葉と洸という2人の運命で結ばれているソウルメイトの「すれ違い」をテーマにした王道少女漫画である。何度も何度も二人が思いを確かめ合いそうな瞬間があっては「すれ違い」が続く。もどかしいにはもどかしいが、二人の心情が吹き出しに言葉として描写されているので、読み手によって解釈が異なるという事態は起きない。双葉と洸が運命の相手であることに異論がある読者はほぼ出現しない。でも、おかえりモネにおいて、モネの気持ちはほとんど表に出ない。「先生と

    • おかえりモネとアオハライド(前編) ⑫

       おかえりモネについて悶々と考えていると何故か、少女漫画の名作アオハライドの中の様々なシーンが目の前によみがえってくるという現象が私の中で何度か起きて、なんでアオハライド?と思われる方は多いかもしれないがおかえりモネの中に描かれる主に恋愛関係をアオハライドになぞらえると意外にもピタリとはまる。なので今日は、気分転換におかえりモネをアオハライドになぞらえて考察してみることとする。  まず大前提として、おかえりモネもアオハライドも共に「すれ違い」をテーマにした物語である。このn

      • 洗濯機とレジリエンス ⑪

         ここのところ、この物語の重要なキーワードである洗濯機について思い巡らしている。そういえばその昔、悶々とすると洗濯機の蓋をあけて中の洗濯物がだんだん一緒くたになっていくのを眺める性癖のある売れない役者の物語を書こうとして中断した事があった。書きかけのまま放置してるうちにドラム式が一般的になって、ああ、この蓋を開けたまま洗濯機が回って、個々の洗濯物が混然とまとまっていく様子をを眺めていると妙に癒されるって感覚、ネタとしては使えなくなってしまったっなあと久方ぶりに書きかけの原稿を

        • おかえりモネの世界はトロンプルイユ ⑩

           トロンプルイユという言葉をご存知だろうか。シュルレアリズムの技法で、だまし絵を意味する。私はおかえりモネの世界の作劇はこのトロンプルイユだと考えている。画面に写っているものだけを一見すると、菅波とモネのラブコメに見える。じれったい二人が結ばれるまで幾度のすれ違いや障害を乗り換えて、最後結ばれてハッピーエンドのドラマのように錯覚させる。でも、ちょっと待ってほしい。障害?菅波とモネの間に障害なんてあっただろうか。まだ二人が互いに対する好意を意識すらする前から登米の森林組合の人た

        おかえりモネとアオハライド(後編)⑬

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        • 朝の連続テレビ小説 おかえりモネ
          13本

        記事

          すれ違い続ける二人という運命 ⑨

           昨日アップした記事で、プロポーズへの答えとして東京を選ぶか、気仙沼を選ぶか、それとも結婚に対する結論を先送りにするのかという第3のルートを選ぶのかという趣旨のことを書いたら、2人が選択したのはまさかのこの第3のルートだった。  東京編の菅波とモネをひとことで表すなら「すれ違い」だ。すれ違いに始まり、すれ違いに終わった。それに尽きる。まず東京編序盤ははすぐ近くにいながら物理的にすれ違っている状態が描かれた。モネがコインランドリーを利用したすぐ後にタッチの差で菅波がタッチの差

          すれ違い続ける二人という運命 ⑨

          つぶされたずんだ餅と百音さんー⑧

           さて明日9月24日金曜日、いよいよ菅波先生のプロポーズにモネが答える回だ。どんな答えを出すのかは今の時点ではわからない。でもずっとわだかまっていたものが少しずつほどけていっている、そんな今日の放送回だった。今回の帰省でモネがみーちゃんに「島に戻りたい」と告白し、まだ積み残した荷物はたくさんあるけれど、でも「お姉ちゃんは津波見てないもんね」について言葉を交わすことによって、モネが多分はじめて「帰ってくる」と言えたのはすごく大きな一歩だったと思う。彼女は「いつか島に戻りたい」と

          つぶされたずんだ餅と百音さんー⑧

          向かい合わせと隣合わせー菅波先生とモネについてー⑦

           今週第19の週月曜日の放送回で菅波先生はいよいよモネにプロポーズして俺たちの菅波界隈は大盛り上がりだ。いざ、プロポーズをしようと口火を切り出したら、また鳴る洗濯機のピー音。菅波先生、なぜかいつも時間に急き立てられてるみたいだけど、何故だろう。部屋の中には砂時計がたくさんだったし。そして大事なプロポーズの最中にスーちゃんからの電話、おじいちゃんの牡蠣棚の被害がことの他大きい事を聞いてパニックに陥るモネ。あちらこちらに電話をしようとするが誰にも繋がらない。(スーちゃんの母にも

          向かい合わせと隣合わせー菅波先生とモネについてー⑦

          お姉ちゃんはずるい、、、、、⑥

           未知はしばし、モネの一番痛いところをぐさっと突いてくる。「お姉ちゃんは、津波見てないもんね」という線引きも、そしてりょーちんをめぐる「なんで、お姉ちゃんなの、お姉ちゃん、ずるい」も。  ドラマの序盤、モネが停滞し迷走していたのに対してみーちゃんは地に足のついた、しっかりものの聡明な少女、自分の道を着実に歩いて行くぶれない次女として対照的に描かれているように見えた。水産高校に通いながら、家業の牡蠣養殖のこと、更には地場産業である水産業の未来まで考えて、テレビでインタビューを

          お姉ちゃんはずるい、、、、、⑥

          拒絶の言葉は愛の言葉?  ⑤

           16週がおかえりモネにおいて、ひとつのターニングポイントであったことは間違いない。木曜日、追い詰められた亮がモネにずっと心の奥底に秘めていた思いをぶつけ、モネがそれを拒絶し、翌金曜日、亮を受け入れなかった自分の動揺をモネが菅波にぶつけ、菅波がぎゅっとモネを抱き寄せて受け止めた週だ。  りょーちんの心の状態を亮の中の人である永瀬は次のように新聞のインタビューの中で分析している。「亮はコップの表現張力のようなギリギリで生きている。行き場のない複雑な感情はちょくちょく溢れる。そ

          拒絶の言葉は愛の言葉?  ⑤

          秘めた思い (後編) ④

           突然、東京を訪れたりょーちんが、モネと遭遇するシーンがものすごく好きだ。日はとうに落ちていて、仕事帰りのモネはすーちゃんとの電話を終えて、風の冷たさに冬が目前に来ていることに気付く。  そして、遠くの人影に気付く。モネは、そのシルエットからそれが他ならぬ亮であることに気付く。もし録画が残っていたり、NHKオンデマンドに入っている人はもう一度このシーンを見直してほしい。多分、道を確かめながら歩いているのだろう、りょーちんはスマホの画面に目をやっていて、ほんの数秒、モネの方が

          秘めた思い (後編) ④

          秘めた思い(前編)   ③

           おかえりモネについての一本目の記事「おかえりモネは循環の物語①」で、16週、心つぶれるような出来事にギリギリまで追いつめられた亮が上京し、コインランドリーでモネに衝動的に思いをぶつけ、それをモネが拒絶したことについて触れた。そして翌日、菅波は動揺したモネを抱き寄せることで、菅モネが事実上の恋人関係に突入したと書いた。  この時、菅モネ派の歓喜の声がtwitter内に席巻したが、同時に、りょーちんを応援してきた人たちは、深く傷つき、また、多くの朝ドラクラスタからは亮の恋心の

          秘めた思い(前編)   ③

          モネの傷とはいったい何なのか ②

           この物語の第一話は、先の記事にも記したように、1995年9月、嵐の中で産気ずく亜哉子のために、船を出してくれと新次に泣きつくコージ、そして荒れ狂う海の中、船を出す新次の姿ではじまる。そしてモネ自身の姿が最初に登場するのは、オープニングのテーマ曲の後で、ぐるぐる回る洗濯機をのぞき込んでいるモネの姿が描かれる。  この時、モネがいるのは故郷の島ではない。登米という山だ。そして第一話の終盤で私たちは、モネがなんらかの理由で島にいれなくなったことを知る。  永浦家の回想シーン。

          モネの傷とはいったい何なのか ②

          おかえりモネは循環の物語 ①

           ずっとnoteをはじめようと思っていたけど、まさか朝ドラについて書くことからスタートすることになろうとは。実は今、朝の連続テレビ小説「おかえりモネ」にものすごくはまっている。  どのくらいハマっているかというと、全然活用していなかった私のtwitterがモネに関するツィートで埋まってしまうくらい。元々、「朝が来た」で清原果耶ちゃんをはじめて見たときから強く心惹かれるものがあったので、当然といえば当然なのだが、このドラマというか、このモネの物語にハマった理由はそれだけではな

          おかえりモネは循環の物語 ①