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真っ直ぐ走らない

さやか星小学校 教務主任・第1学年担任 島岡次郎

島岡 「みんな、今日から体育は『走の運動遊び』、つまりかけっこをしま〜す!いえ〜い!!」
そう伝えて教室の窓から、校庭にひかれたラインを子供達に見せました(上の写真)。すると、子どもたちからは、「先生、かけっこなのに真っ直ぐな線がないよ。」と素直な感想が返ってきました。そうです。さやか星小学校のかけっこでは、真っ直ぐのコースは走りません。もちろん、理由があります。

1つ目に、「ただ直線を走る」という運動は、様々なスポーツの動きを見渡しても、殆どないからです。おそらく、純粋に直線を走る速さだけが求められるのは、陸上競技の100m走くらいでしょう。他のスポーツでは、必ず「曲がる」「回転する」「ジグザグに走る」「跳ぶ」「急加速」「急ブレーキ」といった動きをする場面が出てきます。例えば、最近日本の活躍が著しいラグビーを見てみると、相手のディフェンスをかわすために、細かくステップを踏んだり、突然直角に曲がったりと、走りながら複雑な動きをします。「走の運動遊び」を他のスポーツにつなげていくためには、「ジグザグ」「カクカク」「クルクル」「ピョンピョン」といった動きを獲得する必要があるのです。

2つ目に、「直線を走るのが速い=走るのが速い」というシングル物差しで子供を測らないようにするためです。この運動に取り組むとわかるのですが、直線を走るのはさほど速くないお子さんが、ジグザグになるとステップを細かく刻んで減速せずに走ることができたり、障害物を跨ぐように跳び越えることができたりします。そうすると、マルチな物差しで「走る」という運動を評価し、子供達それぞれの良いところをフィードバックすることができます。これが、最大の目的です。

この授業は、「鬼がやたらと多い鬼ごっこ」で締めくくります。鬼から逃げるためには、練習した動きを総動員しなければなりません。それぞれのコースで獲得した動きを、早速使っていることが良くわかります。鬼ごっこ1回の時間は30秒間。増え鬼で行います。最初の鬼の人数は逃げる人数と同じくらいにします。「鬼が多い」というのがポイントで、30秒間とにかく逃げっぱなし。最後の1人は10人くらいに追いかけられます。その姿は、ラグビーでウィングの選手が、トライを目指してディフェンスを振り切り、必死に爆走する姿と重なります。そのようすを見ながら、私は「しめしめ」とほくそ笑んでいます。