2024.10.08 映画『ポカホンタス』感想 「Color of the Wind」と動物の視点から
※以下の文章にはディズニー映画『ポカホンタス』のネタバレを含みます。
ディズニー映画『ポカホンタス』を初視聴した。
ポカホンタスについては、様々な観点からその批評がなされてきていると思う。
例えば、ネイティブ・アメリカンの表象の仕方や、先住民と植民者の問題から、など。
それらに今更口を出しても仕方ない、というわけではないけれど、私が観て最も話したいと感じたポイントとはズレるので、今回は一旦置いておきたい。
作品としては、とても感動的で神秘的な物語だった。
北アメリカ大陸の豊かな自然は、その風の色や吹き方、風が揺らす木々の柔らかさなどに美しく描き出されていた。同時に、ポカホンタスたちがそれら自然に誇りを抱いているということも。
アラン・メンケンの音楽も素晴らしく、私がディズニーソングの中でも特に好きな「Color of the Wind」のシーンにはやはり心を揺さぶられた(映画は観たことなかったけど、曲は知ってて好きだったの)。
サビのこの部分だけ取り出すと、何を言っているのかよく分からない気もするが、英語版を聴くと何を言わんとしているかが分かってくる。
Have you ever heard......
つまり、蒼い月に吠える狼の声を聞いたり、ヤマネコがニヤリと笑う様子を見たことがあるのか、と尋ねているのだ。
そういう経験はしたことがあるか、そういう世界があるということを知っているか?と。
ポカホンタスがジョン・スミスに訊いているのだ。あなたが知っている世界が世界のすべてではない、あなたが想像のつかない世界が、まだまだあるのだ、と。
「あなたの常識でモノを判断しないで」
というメッセージを、私はこの歌から受け取った。
他にも、動物たちの生き生きとした表象が印象的だった。
ポカホンタスの友人であるアライグマのミーコとハチドリのフリットを中心に、北アメリカ大陸に棲むカワウソやビーバーといった動物たちが各々の生活を営む様子が各所で描かれている。
動物好きの私としては、なかなか映画には出てこないような動物たちが描かれているだけで嬉しかったのだが、それ以上にお、と思ったところがこの映画にはあった。
何かというと、ニンゲンたちの物語と並行し、対比させられて、動物たちの物語も展開されているというところだ。
具体的には、アライグマのミーコとパグ犬のパーシーの関係である。
初めは、イタズラばかりするミーコにパーシーは憤慨し、森の中までミーコを追いかけ回す。先住民と植民者が対立を深めるなか、ミーコとパーシーもいがみ合う。
しかし、森の中を駆けずり回るうちに、パーシーは豊かな自然に触れ、その心地良さに惹かれていく(恐らく)。まるで、ジョンがポカホンタスの教えのもと自然の素晴らしさを知っていったように。植民者の1人であるトーマスがココアムを殺害したところが、パーシーが現地の動物たち側に完全に心を寄せた瞬間かもしれない。
そして夜が明け、植民者たちは英国へ帰国する。ジョンも怪我の治療のため帰国し、一方でポカホンタスはその場に残ることを選択する。
しかし、パーシーは英国に帰らずに、ミーコとともにアメリカ大陸で生きていくことを選択する。
これはもちろん、主人であった総督にもう飼ってもらえそうにないから、という理由もあるだろうが、ミーコと、アメリカの大地と生きていきたいと思ったことが大きいのではないか。
ポカホンタスとジョンの離別の隣では、「知らない土地に残る」という選択をし、幸せを掴まんとしている犬がいる。そのことがものすごく、心にグッときた。
映画はそこで終わっているが、結局アメリカ大陸は南北ともにヨーロッパ人にほぼ完全に植民され、東海岸のヴァージニアどころか西海岸のカリフォルニアに至るまで狩り尽くされ、絞りとられ、今のUSAとなってきた。
その過程で先住民らはたくさん殺され、豊かな森林は伐採され、動物たちの棲家は奪われてきた。決して許されることのない、ニンゲンの愚かな所業である。
そのような歴史があったこと、これから同じ歴史を繰り返してはいけないこと、を私たちは忘れるわけにはいかない。
ポカホンタスには2があるらしい(評価はめちゃくちゃ低い)ので、次はそちらを観てみようか…
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