依頼と自作品のスタンスの分け方

執筆の依頼の仕事と、自分のサークルから出す小説の仕事で、スタンスを分けています。
というのも、私からすると、逆のスタンスをとっている人が多いのです。

私のスタンスは、

・依頼 → 「できること」を「早く」出す
・自作品 →「新しいことに挑戦する」

です。

これを逆にしてしまう人が多いので、なぜこのスタンスなのかを解説します。

まず依頼の時は、顧客が求めているものは「私にすでにできること」を「高品質に」「早く」出すことです。
そもそも依頼とは、求められていることに応えるのが大事です。

私だったら、依頼してくる方は私の得意な「乳首責め」を書いて欲しいと思って依頼します。苦手なフェラをわざわざ私に依頼するなんてことはしません。乳首責めを書くのが上手いから依頼しているのです。
それなのに、何か新しいことをしようとしてしまう人がいます。それは求められていないのです。「乳首責めの高品質なやつを依頼したのに、フェラに挑戦しました!と言われても……頼んでないんだけど……」となるのです。

必然的に、同じような依頼はたくさん来ます。そうなると、前回の他の人の依頼とは被らないように、何か変えようとして、新しいことをやろうとしてしまう人がいます。そうじゃないんです。
前回の依頼は「他の人の依頼」なんです。今回の顧客にとっては、始めてなんです。「前回から変える」の「前回」は、ないんです。変える必要がないのです。

だから依頼の時は、毎回同じことを書く勇気を持ってください。オリジナリティを出すならば、「前回と違う」ではなく、「前回よりクオリティが高い」を目指してください。

その上で、「早く」提出してください。

できることを、高品質に、早く出す。悩みすぎてはいけないのです。一旦書き上がってから寝かせて、仕上げてから出すのではなく、一旦書き上がったら提出した方がいいんです。
仕上げをするのは、自分の目線ではなく、顧客の目線で「こうして欲しい」というコメントが来てから行うべきだからです。

その上で、早く出すことにはとてもメリットがある上に、「可能」です。なぜなら、いわゆる手ぐせで書けるからです。
手ぐせで書くのはよくない、というのは間違いです。顧客はあなたの「手ぐせ」を求めているからです。手ぐせとは、あなたが何も考えなくても書けるものです。言い換えると、それがあなたの得意なことです。顧客はあなたの得意なことをやって欲しいから依頼してきているのです。

手ぐせで、早く、高品質に書く。これを依頼では意識すること。

そうすると、早いので、たくさんの依頼をこなせます。同じような内容を手ぐせで書き続けているので、だんだん洗練されていきます。得意な内容がより得意になっていくのです。

これを自分の作品でやってしまう人がいます。手ぐせで、書けたら出す。依頼はじっくりやる。逆なんです。顧客が求めているのはじっくりやることではなく、納期より早く高品質なものが来ることです。

どのくらい早くやるかと言うと、まず依頼が正式に決まった翌日には60%くらいのものを提出します。音声作品ならトラック1くらいはもう翌日に出します。
仕事の進め方として、早い段階でプロトタイプ(試作品)を提出して意見を交わすことは、早く高品質に仕上げる上でとても重要です。
全部書いてから提出しては、大幅な修正があった時にかなりの時間と手間が無駄になります。

寝かせてより良くして、を納期ギリギリまで繰り返して提出する、というのは私はしません。一発書きでいいから早く出します。そして修正点やコメントをもらいます。依頼において、仕上げは「相手の求めるもの」に合わせる作業であって、「自分の思うもの」に高める作業ではないのです。

トータルのペースとしては、納期1ヶ月の依頼だったら、まずは翌日に60%のプロトタイプを出して、1週間で全部書き上げます。その後数日やりとりして修正して納品です。1ヶ月の依頼は「1ヶ月粘って高め続ける」のではなく、「顧客が良いと言ったらそこで終わりで、完成するのは早ければ早いほどいい」のです。私は納期1ヶ月の依頼ならだいたい1週間ちょっとで修正込みで納品完了させています。

自作品の時は、じっくりやります。新しいことに挑戦します。手ぐせで書く部分は品質を保ち、その上で書けるものの幅を広げるなら自作品で挑戦すべきです。
自作品には〆切がありません。納期もありません。だからじっくり新しいことに挑戦できます。
新しいものに挑戦して、反応が良かったらそのジャンルをまた高めてもいいですし、依頼の幅も広がります。

手ぐせの一発書き、大いに結構。なぜなら、とっさに出てきたものこそが実力だからです。
じっくり仕上げて模索する、そういうのは「実力を高める修行期間」です。そういうのは自作品でやります。
とっさの実力を発揮する依頼が「試合」、とっさに出るものを高めるために試行錯誤する自作品が「練習」なのです。もちろん自作品はいつだって全力でやります。練習だからといって手を抜いては成長はあありません。ただ、依頼と自作品ではスタンスを変えるべきで、特に逆にしてしまわない方がいい、ということをわかっておくと、やりやすくなると思います。

私のスタンス
・依頼 → とっさの実力を出す、「試合」
・自作品 → とっさに出る実力を高めるための、「練習」

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