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娘から母になる。映画『母性』


人は誰しもが、自分が「正しい」と思うものを誰かに押し付けようとする。愛した人が同じように愛してくれるとは限らない。

「私は愛能う限り、娘を大切に育ててきました」

映画の中に出てくるセリフは、精一杯の無償の愛とは言い難い。『私なりにがんばったの』をアピールしているような印象だ。私なりにどうがんばって、どのような結末になっていくのか劇中でわかるようになっている。

劇中では「母と娘」「娘と母」の視点から交互に語られてゆくが、母側からと娘側とでこんなにも違ってくるの?というくらいすれ違いの連続だった。

原作者の湊かなえさんは、人間関係のドロドロとしたイヤなところ、『ああ…こういう人、私の身近にもいる』と居そうな人を文章に落としこむの上手な人だ。

女優さんたちの一寸の狂いもない完璧な演技力でそれを表現しているから、観ていて胸が締め付けられそうになるも、なぜか鑑賞後は爽やかな気持ちになる。

劇中で戸田恵梨香さんが、カクンと膝から崩れ落ちるシーンがあり、思いがけずにショックなことや過去の悲劇を思い出したときの感情って、こんなふうになるんだと印象的だった。

姑からどんなにひどい扱いを受けても、いびられても、こんな崩れ方はしなかったのに、彼女のアキレス腱は、やはり「母」だったのだ。母…。

映画『母性』は、「これを書けたら、作家を辞めてもいい。そう思いながら書いた小説です」と湊かなえさんが語っておられるくらいで、どうして、彼女がこの作品を描きたかったのか、一読者として、一鑑賞者として、私の中に沁み渡るように届いた。

映画は、1人の人の想いが、伝えたいという想いが、映像美となって、たくさんの人に届けられる。映画館での鑑賞って、やっぱり特別。劇中に2回も泣いてしまった。女性の人が多いのかな?と思いきや男性もいたので、男性側からの考察が気になるところ。

映画は、2022年11月23日(水・祝)公開。詳しくは、『母性』公式にて。

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