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グリム童話ATM ショートショート

とある月末の夜、赤ずきんは銀行にいました。理由はもちろん給料の振り込みを確認するためです。

「うっしゃあー!先月より十万も増えてる」ヘンゼルとグレーテルが嬉しそうにATMの前で話します。2人はこの後、ソフトクリームを食べに行くようです。

私達物語の登場人物は、毎日その物語が語られるたびに話を聞く人の頭の中に入り、演技をしています。見た目や言語、口調を合わせないといけないかなり大変なお仕事です。

そして、私達はその報酬をひっそりと銀行に行き貰っているのです。誰かが送ってきてくれるこのお金を私達は『舞台料』と言っています。

赤ずきんの番がきました。振り込みを確認すると赤ずきんは小さくガッツポーズをしました。どうやら、今月は結構頑張っていたみたいですね。

赤ずきんは銀行からの帰りにデパートに寄り、真っ赤な口紅を買いました。自分へのご褒美です。小さな紙袋を持った赤ずきんは鼻歌混じりに森に帰っていきましたとさ。


お題 グリム童話ATM                 401字

あとがき

このシステムが本当にあったとして、お爺さんやお婆さんみたいな色んな作品に登場する人は毎日大変だろうなという感想。

たらはかに(田原にか)様の企画に参加させていただいています

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