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【マンガ批評】 小梅けいと「戦争は女の顔をしていない 1」 (原作:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ、監修:速水螺旋人)はすぐ読めない

※多少のネタバレを含みます!なるべく避けたつもりではありますが、心配な方は是非お先に読んでみてください!とても素敵な作品です。

追記:noteを小梅けいと先生に紹介していただきました!泣
ありがとうございました!!発信することで作者さんにまで声が届くなんて幸せな時代ですね。なかなか更新できていませんが、また機会を見つけて書いていきたいです!

けいと先生

出会い─キリル文字に目がないのです

「お、ロシア語書いてあんじゃん。」

なぜか大学一年生の時に第二外国語としてロシア語と格闘していた私は、不意にキリル文字を見ると嬉しくなってしまう。つい先日、本屋でこのマンガを見ると案の定テンションが上がり、レジに直行してしまった。会計が済んで、ふと思う。

「あ!やってしまった……衝動買いして良かったこと、一回もないのに……。」

買ってしまったのだから仕方ない。何か珍しいマンガが読みたい、と思っていた矢先、入り口付近の目立つ場所で出会ってしまったのが運の尽き。

「そもそもこれ、どんなマンガなの?」と、改めてジロジロ眺めたところ、裏面の帯にこう書かれていた。

ノーベル文学賞を受賞した史上初のジャーナリスト、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ。彼女が取材した、500人にのぼる第二次世界大戦従軍女性たちの証言をマンガ化し、発表されるやいなや大反響を得た作品の、待望のコミックス第1巻ついに刊行。

「うわ、めっちゃ読みたい。」

なんとなく手に取ってしまった私だったが、この文章を読んで期待値がぐんと上がった。

感想・批評─マンガだけど、すぐには読めない

原作を読むより、マンガの方がさっと軽く読めるだろう。

そう思って読み始めた私だったが、その思考はすぐに裏切られる。

ロシア女性達の過酷な戦争従事事情は、ページをめくる手を止めるのに十分だった。

「こんなに前線に出ていた女性達がいたのか……。」

日本だと、「男性が戦場へ出ていき、女性が工場で働いた」と学校で教えられている。戦争文学・映画・マンガ作品を読んでも、ほとんどがその構図だ。恥ずかしながら、私は女性が戦場に行くイメージを全くと言っていいほど持っていなかった。もし行くとしても、慰安婦として……。

しかし、このマンガに出てくる女性達は、男性に負けず劣らずの活躍を戦地で果たした。そして、生きて帰ってきて、アレクシエーヴィチ氏の取材に応じたのだ。

描写の細やかさ、人物達の表情が、何度も心を刺していくのに、取材は止まらない。原作を読んでいないため、マンガだからなのかは分からないが、どんどん色んな人の取材が取り上げられる。「もうやめて!」と思っても、次の人、その次の人と、辛い話が絶えることはなく、中には短くて「もっとこの人の話を聞きたかった…!」と思うこともあった。

自分が「やめて」と思っても止まらないのが戦争であり、それによる悲しみは、誰しもが絶えず抱き続ける。

戦地での仕事の中で、度々、女性ならではの問題が発生する。

特に、戦争時の生理ほど、厄介なものはないと感じた。

布が足りず、配給のシャツの袖を切ってナプキン代わりにする。

それでも、1日に何キロも歩かなければならず、血がズボンを伝って地面に落ちる。ズボンに付いた血が固まると、太ももと擦れて傷ができ、痛くて仕方がない。

戦争は、女の顔を、していない。

こんなに秀逸な題が他にあるだろうか。このタイトルを考えた方─おそらく、原作の訳者である三浦みどりさんかと思われる─を本当に尊敬する。5・7・5になっているところが、何とも日本語らしい。

まとめ─忘れられない、忘れてはいけないマンガ

マンガに登場する女性達は皆、「忘れられない」と口にする。

明後日3月10日は、東京大空襲から75年。

私は戦争を経験していない世代だ。祖父母からも、あまり戦争の話を聞くことが出来なかった。

そんな世代だからこそ、日本のみならず、様々な国で起きている「戦争」というものに、アンテナを張っていかなければいけないと思った。

第2巻の発売が今から楽しみだ。

#マンガ感想文

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