「怪談のテープ起こし」の謎

作者の三津田信三はミステリーもホラーも書ける珍しい作家。
ミステリー小説には怪談要素が加わり、ホラー小説にはミステリー要素が加わるという感じの話が多い。

この「怪談のテープ起こし」はホラー小説で、作者自身を主人公とした実話ベースの小説になっている。短編集という体裁だが、作者本人が、一つ一つのお話を制作する背景や、短編を一冊の本にするために編集者との打ち合わせする場面から話は始まる。

三津田信三のホラー小説の良いところは、怪異の描写が非常にリアルなところだ。人が次々に謎の死を遂げるなんて非現実的なことはなかなか起きない。
なんとなく不気味だけど、わざわざ人に話すほどでもないような微妙な怪異から、徐々に不安を煽られ、追い詰められていくような話が多い。

個人的に特に怖かったのが「黄雨女」と「すれちがうもの」だ。一人暮らしの若者という共通点で、実際に自分に起こってもおかしくない内容だ。

そして、話に登場する人物は何一つ悪いことはしていないにも関わらず、怪異に巻き込まれるのもより一層恐怖を煽る。

「すれちがうもの」を読んだあとで、一人暮らしの部屋に帰るとき、つい誰もいない部屋に向かって「ただいま」というようになってしまった。

そして、最後に残された謎の言葉。「もあぢろびぢうぢなまばぢま、づめねぢぬんねがう」についてだが。

水の中で言っていた言葉で、左から聞こえてきた。ということで、50音順で左に文字をずらしてみると…意味が通らない。しかし、濁点をとって、右に文字をずらすと…。

も→ほ、あ→ん、ち→し、ろ→よ、ひ→に、ち→し、う→る、ち→し、な→た、ま→は、は→な、ち→し、ま→は、つ→す、め→へね→て、ち→し、ぬ→つ、ん→わ、ね→て、か→あ、う→る

ほんしよにしるしたはなしは、すへてしつわてある。
「本書に記した話は、全て実話である」が正解でしょう。

「あ」行の右側が「わ」の50音表と「ん」の50音表があるので、ここで「わ」だと思うとさらにわからなくなります。
この答にたどり着くまで結構苦労しました。やたらに「ぢ」って出てくるからローマ字に直してみたり、そこで文字をアルファベットでずらしてみたり、濁点の文字だけ抜き出してみたり…。

ネットでも探しましたが、解けている人は見当たらず。もしかしたら皆さん「わ」にしてしまったのかもしれませんね。

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