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「役割社会」の中のわたし

女として、教師として、親として、大人として・・・

私たちは、よく自分自身の立場や、環境によって、「〜として」の振る舞いが求められ、「〜として」という役割に従うように、自身の行動選択やふるまいを変えていく。

このような社会を私は「役割社会」と呼びたい。

人々は、当然のように「〜として」という言葉を使うが、私にはそれが、幻想のように聞こえてしまう。

・「〜として」という規範は、果たして、どこで生まれるのだろうか?
・どうして私たちは、その規範に縛られてしまっているように感じているのだろうか?

私にはそんな疑問がある。

しかし、そんなことを考えている私も「女性として」「元教師として」という社会的な役割の幻想に固執してしまっているのかもしれないとも思う。

役割を与えられる喜びと辛さの両義性

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人は物心着いたその日から「所属」というものがある。

青年期の頃、中学校では先生方は「XX中学校の生徒として、〜をしましょう」といった所属意識を高める言葉をよく並べていた。

それはまるで、私たちが所属校のシンボルであるかのように「〜として」という言葉が使われていると私は感じていた。

その一方で、当時の私は先生から発せられる「〜として」という言葉の先に、「誇らしさ」や「喜び」を感じていたのも事実である。

小学校の頃、先生に「最高学年の6年生として、低学年の見本となるような姿を見せましょう」と言われれば、幼い頃の私は「6年生として頑張ろう!」というやる気が芽生えたのも確かであった。

大学院を卒業した私は「教師として」「社会人として」という言葉を耳にする機会が多くなった。そのころの私は、つい1ヶ月前の私自身の存在とは異なる、社会的な肩書きと責任を与えられたような気分であった。

それは、非常に身の引き締まる思いであった。

しかし「教師として〜であるべき」「社会人として〜であるべき」という言葉は、私らしさを削いでいくような気持ちとなっていった。

教師としての鏡とされる先生と自分自身を比較し、私自身の無力さ・無能さ・才能の欠如を感じることもあった。

そう、私は「教師としてこうあるべき」という形に、どうしても自分自身を当てはめることができなかったのだ。

「役割社会」という幻想

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私には、今の現代社会が「役割社会」のように見える。

人々は複数の役割を持ち、それを一生懸命に全うしている。それは、非常に尊い努力の積み重ねだ。

女として生まれたからには、女としての社会的な役割がある。
その逆もしかり。

もちろん、生物学的能力の差により、女性にしか子どもを産むことができないのは事実なのだが、私は「女として、子どもを産むべきだ」という社会通念は、幻想のように感じる。

それは、どこかにルールが設けられているわけでもない。権力のある誰かが命令をしたわけでもない。それを達成しないといけない義務があると、明記されているわけでもない。

ただただ、この考えは、空気のように存在し、女性の役割の一つとして、浮遊し、なぜか、多くの人々が「そうあるべきだ」と信じ切っているようにしか思えない。

このように、すべての人は、誰に言われたわけでもない「空気のような考え方」を、自分に課せらされた「役割」の理想として、必死にその役割を全うしようとしているように見える。

そこには、喜びだけではなく、多くの悲しみや辛さも同時に存在しているような気がするのだ。

しかし、人々は私たちを取り巻く環境が、役割社会という幻想であるとは気づかずに過ごしているのかもしれない。

「私として」歩めばいい

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私は、教師を辞めた日から「教師として」という言葉からの解放を得た。それは、それは、本来の私を取り戻したような気持ちであったのが・・・

その瞬間、私には一切の所属がなくなった。

それは自分で選択したことなのだが、この先、名刺を作ろうとしても、自分に所属がないことが、いかに寂しいことであるのかと実感した日でもあった。

それとともに、この焦燥感は「役割社会」の幻想が私たちに、これほどまでに「役割」の必要性を押し付けている証なのかもしれないとも思った。

それでも・・・。

空気のような固定概念のフレームワークに当て当てはまらない「わたし」という個人としての基盤をしっかりと持つことが、「役割社会」と適度な距離を保ち、生きていく方法なのではないかと、私は思うのだ。

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