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私は存在していたのかしら。 記憶さえ曖昧な乳白色の闇に包まれている。 時間の流れでさ…
アームチェアで膝を組んでいる。 イームズのシェルアームチェアで、座面は織地で肌触りが…
早世した両親に代わってなのでしょうかね。 親戚でもないのに、40年余りも親しい家族がい…
早朝から峠を走る。 明治の空気が残るこの道に、愛車を連れていきたかった。 佐賀の鹿島…
法事のために島を出ます。 片道3時間弱は毎回、新作を書く時間に充てていて。ただし今日は…
還暦という区切りまでもう少し。 生後すぐに母親を。 二十歳そこそこで父親を。 早く…
遊歩道はひび割れていた。 炎熱と風雪の痕跡だろう。 石段に走る隙間から、新芽の息吹が顔を出していた。 冬枯れの遊歩道を歩き続けて、汗ばんできている。歩を止めると吹き下ろす北風に意地悪を感じる。 夜景で有名なスポットで、恋人たちが願掛けに来る場所だ。 むしろ夜の方が賑やかかも知れない。都心から進出して来た洒落たバーガー店もとっくに閉店して、お知らせの貼り紙も色褪せている。 展望台からは、眼下に港町が見下ろせる。 深い入り江が故郷の港町を分断し、そのどこまでが海な