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3月第2週に観た映画とかの話

今週は10本でした。
『1408号室』
『ダークシティ』
『ザ・ブルード/怒りのメタファー』
『ダークハウス』
『RUN/ラン』
『アイデンティティー』
『屋敷女』
『ピエロがお前を嘲笑う』
『ソウ4』
『ソウ5』

 
『1408号室』観終わった。
 オカルト作家が足を踏み入れることになったホテルの部屋が、本当に邪悪な存在に満ちている部屋だったよという話。
 キングの短編が原作ということもあり、雰囲気も良く進んでいくのが楽しい。主人公がホテルの部屋に泊まる中盤からほぼ主人公の一人芝居のように物語が進んでいくのが特徴的で、それまでの日常から隔離され、部屋で非日常な存在と一人っきりで戦わないとならないというのが良く演出された作品になっていたと思います。まるで悪夢のように主人公を蝕む手の打ちようもない邪悪な存在に対し、「その手があったか!」と驚くような起死回生の一撃を決める主人公はサイコーだったね。

『ダークシティ』観終わった。
 永遠に夜を繰り返し姿形すら変える街で暗躍する異邦人(ストレンジャー)、記憶を失くした主人公が暴き出す、この街の秘密とは何か。
 印象的な街並みやインパクト抜群の十二時を告げ続ける大時計など、ビジュアル面からして凝っているのが伝わってくる力作で、謎が謎を呼ぶ物語の展開と相まって、この作品独自の世界観を構築するのに成功していた作品になっていたなぁと思います。ストーリー自体も「そうくるか!」と観ている人間を喜ばせるようなことを色々やってくれているので終始楽しく、特に街から脱出しようとした先に待ち受けた、ある意味世界の果てと言ってもいい存在が現れた時には非常にワクワクさせられたし、SF要素とサスペンスが上手く混ざりあった良作でしたね。けっこう好きな一作。

『ザ・ブルード/怒りのメタファー』観終わった。
 とある治療のために精神科医の元に預けられている妻。その妻が実は娘を虐待しているのでは? と疑う夫。この崩壊しきっている夫婦関係が、なぜか猟奇殺人と繋がっているよという話。
 一応「今起きているこの事件はどういうことなんだ?」ということを探り出すミステリ仕立てのストーリーですが、起こる事件の犯人が秘匿されているわけではなく、むしろ堂々と顔を出しながら犯行シーンが描かれているのが特徴で、登場人物たちが「あいつは何者でどういう理由で犯行を重ねているんだ?」という疑問を解き明かしていくがメインの話になっている。
 けれども、それと同時に「精神科医の元で治療を受けている妻と、そこで行われている治療とは何か?」という別軸の話も展開されていて、一見関係がなさそうなその二つの謎が異常な形で関連付けられて、終盤恐ろしい真実になって視聴者の前に現れる様が、まさにこの監督ならではのものとなっているのが実に見事。
 この監督の作品の中だと比較的シンプルなストーリーだったし、なんとも言えねぇ幕引きもやおどろおどろしい雰囲気も合わさり、楽しい作品になっていましたね。

『ダークハウス』観終わった。
 20年前殺人事件があった屋敷で降霊会をやった大学生グループの身に襲い掛かる大惨事と、その後起こることになる更なる惨事の話。
 冒頭の段階から降霊会が破滅的な結末になったということが示されていて、その過程を警察が捜査を進めることで物語も進んでいくというスタイルになっており、「降霊会で果たして何が起きたのか?」という過去の出来事を生存者に語らせながら、「今こういうことが起きているぞ!」と現在の出来事を織り交ぜることによって、物語に没入できるような臨場感を与えるような演出になっていたのは秀逸でしたね。
 勿論ホラーとしても楽しく、ここで来たら怖いなぁという箇所でバッチリ決めてきたり、登場人物は気付かないけど視聴者にはわかるような恐怖を入れてきたりと、物語力だけではなく画作りでもちゃんと怖さがあったのは良かったですね。
 ただそこまでわりとミステリ的に話が進んできたにもかかわらず、最後にいきなりとある出来事が起こった際は、思わず「それって反則じゃんね!?」と叫んじゃったよ。

『RUN/ラン』観終わった。
 病気を抱えている娘を母親が献身的に世話をしている親子の関係性が、娘が疑念を抱いたことで恐ろしいことに発展していく作品。
 母親のいかにも娘のためを思って自分はこんなにも頑張ってます!という身の振り方が非常に上手く描写されていて、どこからどう見ても良い母親が、些細なことで娘が抱いた疑念から、実はとんでもない人物なんじゃないか?と、徐々にそのベールが剥がされていく過程が実にスリリングに描かれている。
 作中娘のために母親があれやこれやとしてくれるのだが、その全てが娘のためじゃなかったと判明した瞬間は、母親のそのあまりの異常さぶりにドン引いちゃって言葉が出てこなかった。
 母娘の一進一退の攻防や、二転三転する先が読めないストーリーはとても面白いし、伏線の張り方も巧妙で褒めるところしかないのだが、あまりにも母親が怖すぎるあまり、「こいつに何かをされるかもしれない!」という緊張感が常に発生し、観終わった後に精神的に疲弊する作品でもありましたね。
 サイコスリラーとして良く出来てたいたし、そう簡単に終わらせるかよみたいなラストも含めて傑作と言えるでしょう。人間ってこっっっっっっっっっわ……となりたい時にオススメです。

『アイデンティティー』観終わった。
 嵐の中モーテルに閉じ込められたワケありの11人だったが、そこで連続殺人に巻き込まれることになる。一方、とある死刑囚の死刑中止を求めるため、裁判所ではその死刑囚の再審理が行われる予定になっていた。
 点と点でしかなかい、「これとこれがどう繋がるの?」と問いたくなるような二つの出来事が、異形ともいえるロジックで一つに集約し、とんでもないところに着地して観る者の想像の上をいくのは凄まじい手腕としか言い様がなく、なんとなく「ハハン、これはこういうことだろ」と勘繰りながら観ていても、それの裏をかいてくるような展開が繰り広げられていたのは楽しかったですね。
 ただそのロジックは楽しいんだけど、それからそこを導き出すのはだいぶ厳しさもあったりするので、ミステリとしてはだいぶ大味だったなと感じてしまったのが惜しい作品。

『屋敷女』観終わった。
 出産を目前に控えた女性の家に押し入ってきた謎の女。ハサミを手に持って襲いかかってくる女の目的とは何なのか?
 本編がほぼ100%グロテスクで構築されているので、苦手な人は絶対に観ないでくださいね。初めてだよ、実写で七匹の子山羊の狼になりかけるのを観たの……
 特筆すべきは「え、そんなことやっちゃうんすか……」とドン引いちゃう過激な暴力描写の数々で、画面越しでも痛みが伝わってきそうなくらいのリアルさがあり、知らない女にいきなり殺されそうになるという理不尽極まりない状況が合わさった結果、観る人間を恐怖に突き落とす作品になっていましたね。
 一応物語の核として、「襲ってきた女の正体は何なんだ?」という謎があるんだけど、それが明らかになると不条理な出来事とも言えるこの状況が、実は女の中ではちゃんとしたロジックの上に成り立っているんだよというのが判明する構図も良く出来ていて、そういう狂人の論理も味わえる内容でしたね。
 ただまあ、さすがにうへぇと辟易しそうになる描写が本当に多く、どんどんどんどん被害者が増えて血みどろになっていくにつれて、思わず笑いが出ちゃうくらいの生々しいイヤさがあるんだけど、茶化しではなくちゃんとこういう路線で真摯にやっているんだなというのがわかる作りのせいか、「なんかイヤだけど……嫌いじゃない……」となる一本でしたね、ウン。

『ピエロがお前を嘲笑う』観終わった。
 出頭したハッカーが語るこれまでの半生とこれまでのいきさつ、そこに隠されている秘密とは何か?
 パッとしない冴えないナードの青年がいかにして天才ハッカーとなったかという自分語りがほぼ大半をしめていて、ミステリというかアングラ青春ストーリーのような作品でしたね。
 煽りで使われている「あなたは絶対騙される」の文言はたしかに間違ってはおらず、終盤にそれが効果的に使われることもあって「へぇ、そうくるんだ」と驚かされはするんだけど、冒頭から騙そうとする気概を隠すことなく出してくるから、それだけを期待して観ると「そうか……」となっちゃうかもしれないが、鬱屈した青春とその挫折と、そこから生まれるスリリングさを楽しめる映画にはなっていましたね。
 あとこれは意図的にやってることなんだろうけど、わりと某作に近い雰囲気を出して、「もしかしてこれそうじゃない?」と観ている人間に疑問を抱かせてミスリードを誘おうとするのは良い手腕だったとは思うが、終盤でガッツリ映し出してきたのは流石に制作側が良い根性しすぎて笑っちゃったんだよなぁ……(いいのかアレ)

『ソウ4』観終わった。
 ジョンの死後、新しく始まったジグソウによるゲーム。果たしてこのゲームを支配しているジグソウは誰なのか?
 前作までもそうなんだけど、今作は更にこれまでの作品を観てることが前提のネタが色々と仕込まれており、主人公が2でSWATの隊長だった人だったり、2の主人公で3で更に酷いことにあったエリックや、3のゲームで散々な目にあった方々など、新しく新章を始めるにあたってとりあえずこれまでの精算としてオールスターを出してまとめた作品をやっておくか……みたいな意図が感じられる雰囲気がストーリーから漂っていましたね。
 これはこれで面白かったんだけど、やりたいことを全部やろうとした結果、かなりこれまでの時系列パズルに苦心しているというか、「え? そこでそんなことやってたの?」みたいなジグソウの過酷スケジュールが明らかになったり、テクニカルなことをやろうとしたらそれ故にわかりにくくなってしまったような過去作を使った伏線回収などが繰り広げられていて、なんというかこれまでとはまた違う、騒々しさと変な映画っぽさを兼ね合わせたような一作になっていたように感じましたね。
 あとジグソウのゲームがシリーズを重ねるごとにパワーアップするのに反比例して、ミステリ度がパワーダウンしてるのは残念ではあるんだけど、その辺を引っ括めて「うん、ソウだね……」となる内容でした。

『ソウ5』観終わった。
 前作でジョンの後継者となったあの人が、新しくゲームを始めたり邪魔者を消そうとする話。
 ストーリーとしては「なぜあいつはジョンの後継者になったのか?」を掘り下げたり、ジョン亡き後の新ジグソウはどう振る舞うのか? が描かれたりと、新章開幕感があってそれはそれで楽しめはしたんだけど、肝心のジグソウのゲームの方が今回はわりとおまけ気味になっていたというか、並行して進んでるメイン軸の話とガッツリ交わるような物ではなく、別軸で独立して進んでるサブ的な扱いだったのがかなり残念で、そこはもうちょい物語に絡ませてくれても良かったんじゃねぇかなぁと思ったりもした。
 あとはまあ、2つ目のゲームが後の展開のためなんだろうけど観ててもツッコんじゃうようなバカさがあったり(冷静じゃないのを差し引いてもわかるだろアレは!!)、露骨に次作へ繋げるための伏線を残しすぎたり、「今それを出したなら作中でもそれが何かを教えてくれ!」と言いたくなるようなアイテムも出てきたりしたが、次で解決されることに期待だね。いいのか、期待して……

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