マンガで考察シリーズ⑯龍狼伝の雲体風身
龍狼伝には雲体風身(うんたいふうしん)という術が登場します。
雲体風身という術は神経伝達から筋肉の収縮まで、普通では知覚できないことを感じとり操ります。
この雲体風身を身につけるために、主人公の志狼は師匠である仙人の左慈に身体の機能をほぼすべて停止させられました。
放っておけばやがて心臓も止まって死に至るという極限状態の中で、普段なら自律神経により動いている内臓や血流を意識的に動かしました。
身体を極限まで追い込んで眠っている力を引き出すというのは密教における山林修行に似ています。
山林修行も心身を極限の状態に追い込むことで神通力を得るとされています。
人間の身体は大半の機能を意識的に動かせず、普段は使えていない機能が多くあるのです。
火事場の馬鹿力のように危機に瀕したときにすごい力を出せるのは、普段は使っていない機能が目覚めるからです。
ただし普段は眠っている機能は、使い過ぎれば身体に毒になることがあります。
そんな眠っている機能を目覚めさせたお坊さんは神通力を持っているとされて、昔の日本では手厚い待遇を受けていたのです。
雲体風身とは、そんな眠っている力を極限まで引き出す術なので多用は出来ません。
使いすぎれば心身を破壊してしまう危険な術として登場し、作品の前半では雲体風身を多用した志狼は我を失って暴走し瀕死の状態に陥りました。
人間の脳や身体に眠っている機能が多いのは、使い方を誤れば心身ともに壊れてしまう恐れがあるからです。
アスリートと呼ばれる人間の多くは、わずかながらの潜在能力を引き出しているのかもしれません。
ですが人間の潜在能力を引き出すには慎重に、かつ時間をかけてこそ良い使い方を出来るのだと私は考えています。
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