誰にでも書けないものはある
基本的に、想像がつくものであれば小説で描写できないものはないと思っているのだけど、一般的には知られているのに自分はたまたま知らないものは、なまじ読者は大半が常識レベルで知っているのでかえって書けないのである。
私にとって、そのうちのひとつが『学校』である。
そう………私は………一般的な学校生活を…………一度も送ったことがない!
いや、義務教育である以上中学までは普通にいきますし、高校も普通に卒業しているんですけど、何せ限界集落の育ちなので。
保育園から中学校まで1クラスしかない、人間関係確定のエスカレーター。
学校の周囲には店もない、普通にお隣が牧場でグラウンドに牛が脱走してきたこともある限界集落。
スクールバスにのって学校にいき、スクールバスにのって家に帰る。
友達の家は一番近くても数キロ先。お隣の家はあの丘の向こう。
学校の後は農業の手伝い。休日も農業の手伝い。
夏休みも冬休みも農業の手伝いで、うっかりすると休み明けまで友達の顔を1回も見ない(たまたま買い物にいった時にエンカウントすることはなくもないけどほぼない)
そんな状態なので、高校も「バスで行ける範囲の学校で、自分のレベルで入れそうなところに行く」ので、半数近くが同じ高校に通う。ほぼ幼馴染か、親の知人なので新鮮な気持ちはいっさいない。高校までいってやっと3クラス。高校までいってやっと学校の周りに店がある。
ファーストフード店はない。コンビニはない。(少なくとも私がかよっていた当時は)
服屋はない。ゲーセンはない。カラオケもない。
辛うじて本屋とCDショップがある。
要するにほぼ何もない。
何もないので、高校でもほぼやることはバスに乗って学校に行き、バスにのって帰るだけ。
解散!!!!!!!!!!!!
限界集落育ちの私にとって、学校の知識はマンガで得るもの。自分の通っている学校はアテにならない。生徒の8割が農家の子供。農家の常識しかしらない。なんならわずかにいる市街育ちの子も「農業関連企業」勤めだったりして、もう農業の臭いしかしない。農家。農家しかいねえ。
帰りにマックよってこー!とかカラオケいくー?とかないんだよ!!!!
学校、ああ、学校。
大体の人は普通の中高生がどんなことをやっているか知っている。
なんなら田舎の農家育ちでも、農業の種類によっては家や集落が一か所に集中する傾向があるので「〇〇ちゃんあそぼー!」ってやったことがある。
牛飼い農家はそんな状況にならないんですよ!!!!
※なぜかというと、家を中心に周囲に牛を放牧する牧草地を配置しないといけないので、たまたま道を挟んでお向かいの農家が同級生だったとかそういう奇跡がない限り、基本的に隣家がめちゃくちゃ遠くて子供だけで交流しにいくような状況が発生しないから
そんな私も、一回ラノベでデビューした時には果敢にも学園ものに挑戦した。挑戦してしまった。
(いや、当時学園ものが主流で学園もの以外はちょっと……みたいな感じだったので……)
とはいえ、学校描写をできるだけ薄目にすることで私はそのハードルを乗り越えた…………はずだった。
私は北海道の生まれである。北海道の育ちである。
そして、北海道の中でもかなり寒い地域の出身である。
具体的にどれくらい寒いかというと、平地に高山植物が生えているレベル。
私は大きなミスを犯した。
海水浴にいったことがないのに(そもそも海水浴場が存在しないので)、夏休み海水浴水着回を作ってしまったのだ!!
海水浴に行ったことがないのに!!!!!!!!!!!!!!
「普通、海水浴場に昆布は落ちていません」
「マジですか?????」
海水浴場に!!!!!!!!
昆布は落ちてない!!!!!!!!!!!!!
知らなかった!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
※私の地元の方の海ではほぼ100%の確率で落ちている
時は流れ、数年後、たまたま友人と季節外れの小樽ドリームビーチ(札幌から一番近い海水浴場)に行って浜辺を散歩などしてみたのだが。
私「ホントだ、昆布落ちてない!?!?!?!?!?!?」
友「落ちてると思ってたんですか???????????」
昆布落ちてない!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
落ちてない!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ついでに、浜にうちあげられたホヤとか、干からびたヒトデとかもない……。何でだよ。乾いたヒトデを手裏剣にして遊ぶの、地元の海的には最大の娯楽なのにヒトデ手裏剣できないなんてそんな。
大丈夫です、私はもう覚えました。
海水浴場に昆布は落ちていない。
覚えました!!!!!!!!!!!!!!!!!!(必死)
よく知らないことは素直に申告しましょう。特に仕事で書く時はね!
君と僕との約束だ!!!!!!!!!!
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