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生き方はいつも自分で決める。

友人Kの誕生日会へ行ってきた。あまり友人の多くないわたしの、更に少ないデンマーク人の友人のひとり、K。随分前に一緒に働いていたが、職場を変わった今でも、たまに会っては、あれやこれやとどうでも良い話をする仲だ。一人暮らしの彼女のアパートに行ってみると、女性ばかり5人が招待されていて、明るい小さなリビングで、Kの作ったブランチをいただくというとてもヒュッゲなひと時だった。そこでのことを書こうと思う。

Kのアパートに招かれた全員がそろったところで、それぞれ自己紹介。最初の女性は小学校からのKの親友、そしてその奥さん(「?」と思った方、そうです、そういうことです)。次は高校時代の友人2人。この3人はすべてKの地元出身。今は全員コペンハーゲンかその近郊に暮らしている。そしてわたし。

実はKが今回何歳になったのかわたしは知らなかった。今まで何となく聞きそびれてしまっていて、ま、誕生日会だから今日にでも聞くかと思って来たものの、タイミングを失い(だってKに尋ねるということは、全員のお年も尋ねるということでもあって)、結局わからないまま。30代後半~40ぐらい、わたしよりいくつか年下かなと思っている。

Kの高校時代の友人たちは陽気で、雑談をしていてわかったことは、2人ともわたしの子どもと同じぐらいの年の子がいて、2人とも今は子どもの父親ではなく、新しいパートナーと暮らしている保育士さんだった。女性2人のカップルは大切にかわいがっている犬たちの写真を見せてくれた。夜勤専門の介護士さんと、保育園の調理師さんカップル。2人の時間を持つのはなかなか大変だよねという話をした。

雑談をしていると「実は今日、伝えたいことがあって!」とK。「え、もしかして?」という声が聞こえ、Kはそれを遮るように「そう、妊娠したの!!」と少し照れた様子で、でも嬉しさを隠し切れない表情で言った。「ずっとほしかったんだもんね、ほんとに良かった!」と、周りのゲストたちはハグをしようと一斉に立ち上がり、Kの方へと集まった。

わたしはKが妊娠をそれほど強く希望していたことを知らなかったのだけど(知らないことばかりだなぁ)、それは嬉しい報告だし、そっか、やっぱりほしかったのか、それは良かった!と嬉しい気持ちで彼女にハグした。でもそのあと、色々と気になることがでてきた。

というのは、Kは今求職中。ここのところ失業保険で暮らしている。パートナーは思春期のお子さん2人を持つ男性。デンマークは共同親権なので、離婚後も子どもは両親の家を行ったり来たりするため、お子さんたちは隔週でKのパートナーの家で暮らしている。Kとパートナーは長く付き合っているものの、それぞれ自分のアパートで暮らしている。

「じゃ、彼と一緒に暮らすなら、出産前に引越し?」と、当然のようにたずねてしまったわたしに「うーん、そのつもりはないんだ」とK。高校の友人たちも「そうだよね、別に今のままでもやれるんじゃない」と。ほう、そんなものなんだとわたし。

話題は、年明けに切れる失業保険後、どうやって産後に申請できる「産・育休失業保険」までをつなぐかという話に。その後、幼い子どもを持ちながら失業保険が切れたあとどう食つなぐかという話にもなった。コペンハーゲン市では、自分の子ども(2歳まで)ともう一人別家庭の子どもをお世話すると、家庭保育として市から給与が支払われる。その制度を使うこともありだよね、という話にもなった。Kはとても真剣に聞いていた。

子どもが生まれるにあたって、親同士が一緒に暮らさないという選択。求職中で、さらに失業保険の給付期限が迫ってても、自分で生きるという選択。Kやその友人たちと話していて、わたしからするとこれだけ切羽詰まっていると思えてならない状況でも、いつでも女性である自分に選択権があると考えるのは、何か新しい発見だった。Kがパートナーと共に子どもを持つことを選択したのなら、彼と暮らして、一時でも経済的に頼るのも選択肢の一つじゃないかとわたしは思ったが、その発想は、単にわたしの文化的背景に縛られた一つの考え方にすぎないのかもしれない。どんな状況にいても、自分の人生の選択権は自分にあるということを、また一度考えさせられた。

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Kの高校時代の友人たちは、どんなプレゼントを贈ろうかとあれこれ楽しそうに話を進める。話題が子どものことばかりになっていたことに気づき、別の友人がさりげなく女性カップルに飼い犬の質問をする。そうしてしばらく、あれやこれやととりとめのない話をし、カップルの2人は「じゃ、そろそろ」といって席を立った。その後、話題はまた子どもの話に戻った。

多様な生き方をしているKの友人たちと話しながら、人生の選択の幅をせばめているのは自分自身でしかないのかもしれない、そんなことをぼんやり思った。


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