悲しみ。

"Pigen på tårehavet" af Pernille Brun Andersen, Eksistensen 2017 「おんなのこは なみだの海に」パニレ・ブルン・アナセン作絵 絵本 デンマーク

夕飯時。食事に手をつけようとしない女の子に、ママは「大丈夫?」「もっとグリンピース食べないの?」と声をかける。イライラした表情の女の子は怒りをつのらせ、「グリンピースなんていらないの!あたしはパパにかえってきてほしいの!」とさけぶ。そして彼女は部屋にこもり、段ボールの船を作って空想の世界へと飛び出す。暗い海を渡り、パパを探しに。行く手には、得体のしれない暗闇が忍び寄る。それを厳しい表情でにらみ返す女の子。道行く中で、その暗闇が涙を流す。それに気づき、なぐさめる女の子。その一部始終の背景には、女の子のパパの姿がある。暗闇と時間を過ごしながら、少しずつ心を開きはじめた彼女は、「かなしみ」と名付けたその暗闇に打ち明ける。「かなしみ、あのね、あたしのパパは死んじゃったんだ。あたし、パパに会いたいの」かなしみとハグをした彼女は、海を渡り、ママの元へと帰ってゆく。

この本にはほとんど文章がない。特に、主人公の女の子がなみだの海へと旅立った場面以降、彼女がかなしみをうけいれていく過程は、イラストのみで描かれている。女の子はかなしみと戦い続け、次第にかなしみをうけいれていく。作者の言葉を借りると「女の子は空想の世界を通して、悲しみを戦う相手、避けるべきものから、自分の友、共に生きる存在として受け入れていく」物語として描かれている。

悲しみを共に生きる存在として受け入れることが、誰にでもできるわけではないかもしれない。でも、この絵本に描かれているような葛藤や多くの思いに押しつぶされそうになりながら、今日を過ごされた方々がたくさんいらっしゃるのかもしれないと思いながらページをめくった。3月11日に寄せて。

作者 Pernille Brun Andersenのページ  ここにこの本の多くのイラストが出ています。



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