文字にならないお話を読む

"Still deg i kø!" af Kristin Roskifte, 2015 (i Norge 2005) 「列にならんで!」クリスティン・ロスキフテ作・絵 ノルウェー 絵本

表紙のタイトルを叫んでいる女性の前に、ずらーっと並んでいる人々。なんとこの本の最後のページまでひたすら並んでいる(息子によると30ページつづいているらしい)。そして、一番最後を開けてみないと、この人たちが何のために並んでいるのかわからない!時折、並んでいる人たち同士の会話が楽しい。「ほんと、すっごく久しぶりよね!」と言い合う女の子たち、「おぉ、〇〇さんと同じ会社の方でしたか。私は彼と何年もゴルフ仲間ですよ」とあいさつし合うビジネスマン。「高齢者なら時間いっぱいあるだろう?場所代わってくださいよ」「あんたね、私に足りないのは時間よ!」と言い合う男性と高齢の女性などなど。それ以外にも奇抜な服装の人、結婚式直前の花嫁さん、消防士、どろぼう、王様、宇宙飛行士。それぞれの服装や待っている態度、ちょっとした会話が楽しい。

ストーリーはなく、また文もほとんどないこういうタイプの本は、デンマークの図書館では、親子で読むときの会話を引き出す本として紹介されることが多い。いわゆる「字のない絵本」と同じように、絵だけでストーリーが構成されているタイプの本は、読む人によって、また読むたびに、そこで毎回小さなストーリーが生まれる。だまって本を聞いてられない子どもでも、親と一緒に気になるイラストについて話しているだけなら楽しいし、何度も見るたびに新しい発見がある。

特に北欧らしさ、ノルウェーらしさはないけれど、ひとつだけあるとすれば、こうやって長い長い列に並ぶことの多い北欧の人たち(最近は番号制なので実際には並んでないけど、待つのは長い)の辛抱強さが「らしさ」かな、と思う。

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