特別なものではなく、でもとても大切なこと

"Alla barns rätt - En bilderbok om Barnkonventionen" af Pernilla Stalfelt, 2010. 「全ての子どもにとっての権利ー子どもの権利条約についての絵本」パニラ・スタルフェルト作・絵 絵本 スウェーデン

1990年に国連で発効され、日本でも1994年に批准された「児童の権利に関する条約」について扱った絵本。条約の内容を子どもにわかりやすいように、かわいらしいイラストと短い文章で綴っている。作者は最初のページでこの本を書いた理由を以下のように記している。

「子どもの権利条約を読むと、世界でできることはまだまだあると私は感じます。たくさんの国々がこの条約を批准していますが、一つ一つの条項を現実社会や人々の考え方に反映するのは難しい。それにはとても時間がかかります。だから私たちはこの条約のことを何度も思い出し、時には条約の内容をイラストにしたり、演劇やダンスで表現したり、物語として紹介したりすることも必要ではないかなと思うのです。様々な方法で表現することで、多くの子どもたちにメッセージが届きやすくするのです。理解する方法をあれこれ試してみるとでもいうのでしょうか。この本もそんな思いから描きました。この絵本は、子どもの権利条約について子どもたちにもわかりやすく描いたつもりです。もちろんこれは私個人が子どもの権利条約を読んで解釈したことを描いたものに過ぎませんが、たくさんの人々に喜んでもらえたり、役に立てればと思っています。(中略)もっと他の方法で、子どもの権利条約を紹介する方法もきっとあるでしょう。もしより多くの人々がこの条約を紹介することができれば、世界のさらに多くの子どもたちが安心して生きることができ、より多くの幸せを感じられるようになると思っています。それは世界へのすてきなプレゼントになるのではないでしょうか。」

そして本の最後のページには条約の54か条全てが記されている。

子どもにもわかりやすく描かれている例をいくつか紹介しようと思う。たとえばこちら。

「子どもは、たとえ両親が離婚し、違う国に暮らすことになっても、両親と会う権利がある」(「パパはばかな人よ」「でもパパに会いたいよ」)

「すべての子どもは信じたいものを信じる権利がある」(サンタがいると信じる/おばけの存在を信じるなど)

「子どもに暴力をふるってはいけない、子どもに酷いことを言ってはいけない、脅したり、危険なことをしてはいけない」

(すべての翻訳はデンマーク語版をもとにしています)

子どもの権利条約の日本語版全文はこちら これを読むとかなり子どもの目線に合わせて書き換え表現されていることがわかる。作者自身も、これは自分で条約を読んで解釈したものを描いているに過ぎないと述べているとおり、直訳ではないが、このようにイラストと具体的でわかりやすい表現を用いて描くことで、子どもにもとても良く理解できるように描かれている。

私が最も北欧らしいなと感じるのは、こういった本が、普通に図書館の絵本コーナーに他の絵本と同じように置かれていて、子どもたちが簡単に手に取ってパラパラめくったり、借りて帰って親に読んでもらえるという環境にあるということ。「子どもの権利条約」は子どものために作られたもの。子どもがその存在を知り、理解できるようにすることがとても大切だと考える大人がいること、そしてその内容が、こうして子どもたちに届きやすい環境にあることはすばらしいなと思う。さすが人権や民主主義を重視する国々だなぁと感心してしまう。

追記:日本の子どもたちにも、この子どもの権利条約をかみ砕いてわかりやすく表現した本を作るならば、「りんごかもしれない」の著者、ヨシタケシンスケさんにぜひ、たくさんのイラストと具体例を取り入れて書いて/描いていただきたいなと思ったりしています。

サポートいただけるととっても励みになります。いただいたサポートは、記事を書くためのリサーチ時に、お茶やお菓子代として使わせていただきます。ありがとうございます!