手に入れる=自分のものになる?
"Hr. Wilders stjerne" af Kim Fupz Aakeson, Rasmus Bregnhøi 2014 Carlsen「ウィルダーさんの星」キム・フォップス・オーケソン作、ラスムス・ブラインホイ絵
子どもの頃から誕生日にはお空のお星さまがほしいと言っていたウィルダーさん。大人になり、自分でほしいものを手に入れられるようになった彼は、長いはしごを作って空から星をひとつもぎ取ります。でもその星は、ウィルダーさんの思いとは逆に、日に日に元気がなくなって。。。ほしいものを手に入れられる、ということはどういうことなのか考えさせられるお話。
作者は、デンマークの児童文学界の巨匠と言ってしまっても良いかな、キム・フォップス・オーケソン氏。日本でも「おじいちゃんがおばけになったわけ」でいくつか賞を受けている作家でもある。この作品は、別のイラストレーターで短編集の中の一つのお話として1988年に初めて紹介され、短編映画にもなっている(Se forsmagをクリックするとラストシーンが見られます)。
ウィルダーさんが大人になった様子をユーモラスに描きながら、彼は自分で自分のしたいことを決められる、要するに、大人になるということは、何でも自分の意思で行動できるということを作者は折に触れて表現している。しかし、手に入れたものが、果たして本当に自分のものになるのかは、自分の意思だけでは決められない、ということも。また、ウィルダーさんが星を手に入れようとはしごを作っていた時の周囲の反応(「バカじゃないのか?」)と、彼が星を手に入れた時の反応(「すごい、かっこいい!最高!」)それぞれの、周りの大人たちの反応も興味深い。さらっと描かれているし、そしてこれはお話のメインではないのだけれど、どんなときも自分がぶれないでいる、ということもウィルダーさんの良さだったりする。
このお話は初めて発表されたときのものから文章を少し変え、新しいイラストで絵本化された。当時の状況はわからないものの、今の時代でも、作品のもつメッセージは十分リアルで深い。
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