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菓子四季録

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菓子四季録は、菓子研究家とグラフィックデザイナーのふたりが毎月ひとつ、季節の素材を使ったお菓子のレシピを紹介する連載です。 ひとつのお菓子の魅力を、ふたりそれぞれの視点から綴りま… もっと読む
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記事一覧

菓子四季録について

菓子四季録 菓子四季録は、菓子研究家とグラフィックデザイナーのふたりが毎月ひとつ、季節の素材を使ったお菓子のレシピを紹介する連載です。レシピ記事でありフードエッセイでもあり、ひとつのお菓子の魅力を、ふたりそれぞれの視点から綴ります。 ひとつのお菓子に対して、記事がふたつ存在します。片方だけでも完結するようになっていますが、両方の記事を読んでいただくと、より深く味わっていただけると思います。ふたりとも同じお菓子を食べているはずなのに、そこにはまったく違う世界が現れます。どう

軽やかなダンス 〈菓子四季録 vol.11〉

菓子四季録では、グラフィックデザイナー 澤田清佳さんと一緒にお菓子のレシピをご紹介しています。ひとつのお菓子の魅力を、ふたりそれぞれの視点から綴る菓子四季録のマガジンページはこちら。今回紹介するお菓子は、軽やかな口どけを味わう「苺とミルキークリームのブッセ」。 手で持って味わって まあるく焼かれた生地はふんわりしていて、とっても軽い。生地の上には白い粉砂糖が薄くかかりドリーミングな雰囲気。間からのぞく白いクリームと赤い苺。ブッセはただずまいからしてとってもキュートなのです

春の空気みたいに軽やかな苺のお菓子 〈菓子四季録 vol.11〉

可愛くて、軽やかで、春にぴったり。そんなお菓子のこと。 今月の菓子四季録でレシピをご紹介するのは「苺とミルキークリームのブッセ」。ブッセというお菓子は、丸い形のビスキュイ生地でクリームやジャムなどをサンドしたお菓子だ。洋風のどら焼きだと想像していただくと見た目がわかりやすいと思う。 フランス菓子のように見えるブッセだが、発祥地はフランスではなく日本ということなので(生み出したお店や菓子職人の公式な記録には辿り着けなかった)、洋菓子ではなく和菓子に分類されることもあるらしい

春の光を纏う 〈菓子四季録 vol.10〉

菓子四季録では、グラフィックデザイナー 澤田清佳さんと一緒にお菓子のレシピをご紹介しています。ひとつのお菓子の魅力を、ふたりそれぞれの視点から綴る菓子四季録のマガジンページはこちら。今回紹介するお菓子は、みずみずしく春を知らせる「柑橘のマリネを添えたババロア」。 国産柑橘のハイシーズンです 冬から春にかけてたくさんの国産柑橘が旬を迎えます。冬の始まりと共に青果売り場のみかんのスペースが増え、年末に向けて柚子や金柑を見かける頻度が上がります。年が明けると、りんごと交代するよ

きらきら光るガラスみたいなマリネを添えたババロア 〈菓子四季録 vol.10〉

9種の柑橘でデザートを作ったらグラデーションが美しすぎて、小学2年生の頃の記憶まで蘇ってしまった。「色」に興味を持つことになった原体験の記憶。そんな美しいデザートのことを綴りたい。 3月の菓子四季録のメニューは柑橘のマリネとババロアにしよう、と本マガジンのレシピ担当である淳子先生が言った時、わたしはこの季節の柑橘たちに対して特別な印象は抱いておらず、頭に思い浮かぶのは「みかんの仲間がたくさんいる季節だなぁ」という漠然としたイメージだった。でも、春の気配がしつつもまだ少し肌寒

五感を満たすお菓子 〈菓子四季録 vol.9〉

菓子四季録では、グラフィックデザイナー 澤田清佳さんと一緒にお菓子のレシピをご紹介しています。ひとつのお菓子の魅力を、ふたりそれぞれの視点から綴る菓子四季録のマガジンページはこちら。今回紹介するお菓子は、日本の冬を感じる「柚子のスフレ」。 この時期だからこそのレシピ 「湯気はごちそう」という言葉があるけれど、寒さがぐっと身に沁みるこの時期にはそれをしみじみ感じます。温かさはおいしさの一部。今回は1年で1番寒さが厳しいこの時期にぴったりな熱々ふわふわのデザートを紹介します。

ディズニーランドを思い出す柚子のスフレ 〈菓子四季録 vol.9〉

スフレを食べて、ディズニーランドの”あれ”を思い出す。意外な共通点。 noteでの連載「菓子四季録」では、毎月ひとつ、季節の素材を使ったレシピを紹介している。今回紹介する「柚子のスフレ」は、スフレというお菓子をゆずでアレンジしたメニューである。 今回の記事を書くためにスフレを食べながら、わたしは「スフレと似ているもの」を見つけてしまった。それはディズニーランドに存在する、あるコンテンツ。答えをお伝えする前にスフレを食べる時の流れを実況するので、似ているものを推理してみてい

小さな幸せを味わうクリスマス菓子 〈菓子四季録 vol.8〉

菓子四季録では、グラフィックデザイナー 澤田清佳さんと一緒にお菓子のレシピをご紹介しています。ひとつのお菓子の魅力を、ふたりそれぞれの視点から綴る菓子四季録のマガジンページはこちら。今回紹介するお菓子は、熟成されていく味わいを楽しむ「ラム酒漬けフルーツのクグロフケーキ」。 Advent(クリスマス前の期間)を楽しむケーキ 街中にクリスマスツリーが飾られ、イルミネーションが灯り、クリスマスソングが流れる。そんな12月がけっこう好きです。みんながウキウキしてわくわくしてる感

大人になったから楽しみ方がわかったフルーツケーキ 〈菓子四季録 vol.8〉

フルーツケーキ、お好きですか? わたしは苦手で、でも好きになりました。それはフルーツケーキの楽しみ方を知ったから。そんなお話。 noteでの連載「菓子四季録」では、毎月ひとつ、季節の素材を使ったレシピを紹介している。今回紹介する「ラム酒漬けフルーツのクグロフケーキ」は、簡単にいえばクグロフ型で焼いたフルーツケーキだ。クグロフ型、という言葉を初めて耳にする方に形状を説明をすると、ドーナツ型やシフォンケーキ型のように中央に穴が空いており、焼き上がりの背の高さでもある深さは比較的

洋梨追熟攻略マニュアル 〈菓子四季録 vol.7〉

菓子四季録では、グラフィックデザイナー 澤田清佳さんと一緒にお菓子のレシピをご紹介しています。ひとつのお菓子の魅力を、ふたりそれぞれの視点から綴る菓子四季録のマガジンページはこちら。今回紹介するお菓子は、追熟することで芳しい香りに包まれた洋梨と、ココア入りのしっとり生地を味わう「洋梨のアーモンドケーキ」。 最大のポイントはじっくり待つこと 今月の季節素材は洋梨です。毎年、長野に住んでいる友人が洋梨を箱で送ってくれます。そのときにいつも作っているお気に入りケーキがあるので

優雅にソファに座る洋梨のケーキ 〈菓子四季録 vol.7〉

「境界線」と「品格」。これが今回のケーキを食べて、わたしの頭に浮かんだキーワードだ。 (1)境界線について 今回レシピを紹介する「洋梨のアーモンドケーキ」は、アーモンドパウダーとココアが入ったしっとりタイプのバターケーキ生地に、カットした洋梨を焼き込んだお菓子だ。 この洋梨のケーキに、クリームソーダとの思いがけない共通点を見つけた。それが「境界線」だ。そして第三の食感。食材と食材の間の境界線に、特別な食感が生まれている。 クリームソーダのアイスクリームがグラスの水面に

深まる秋にはビターを添えて 〈菓子四季録 vol.6〉

菓子四季録では、グラフィックデザイナー 澤田清佳さんと一緒にお菓子のレシピをご紹介しています。ひとつのお菓子の魅力を、ふたりそれぞれの視点から綴る菓子四季録のマガジンページはこちら。今回紹介するお菓子は、こっくりまろやかな秋を味わう「パンプキンプディング」。 プリン作りで一番難しいのは? プリン作りで一番難しいのは、実は「カラメルソースを作る」工程だと思うのです。 プリン自体は初心者向きのお菓子だと思います。材料もシンプルで、よく使うおなじみのアイテムばかりです。作業

メイクの魔法にかけられたかぼちゃのお菓子 〈菓子四季録 vol.6〉

メイクアップ、つまりお化粧。メイクの魔法にかかったかぼちゃを食べたことがありますか。 かぼちゃという食べもの。それは「甘い」「ほくほく」という言葉だったり「まったり」「まろやか」という言葉だったり、時に「もったり」「のっぺり」という言葉で語られる食べもの。そのほとんどが「素朴」寄りのイメージで、かぼちゃに「スタイリッシュ」「おしゃれ」という言葉を使うことはあまりないように思う。 そんな素朴なかぼちゃは、メイクをすると別人に変わる。がらりと変わる。 今月レシピを紹介するお

秋のはじまりを閉じ込めて 〈菓子四季録 vol.5〉

菓子四季録では、グラフィックデザイナー 澤田清佳さんと一緒にお菓子のレシピをご紹介しています。ひとつのお菓子の魅力を、ふたりそれぞれの視点から綴る菓子四季録のマガジンページはこちら。今回紹介するお菓子は、少し大人な甘さを味わう「無花果と白ワインのゼリー」。 ゼリーに季節を閉じ込める 今月の季節素材は無花果です。スーパーに無花果がたくさん並ぶと秋が来たなと思います。無花果ほど、秋のはじまりにふさわしいフルーツはないような気がするのです。 外皮は赤紫に少しグリーンが入り、中