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詩人考

血まみれた目で見る月
蜜壺の蠢きが
分泌させる愛液
稲光とさざなみ
容赦なく繰り返す悲劇
微睡から覚めるたびに
蓮の葉の夢の奥底
丁寧に現れた白磁の園
象牙の塔と花の湖
きみはまだ人を愛せるか
問いは右耳から左耳へ流れ
冬に紛れ細切れ、そして散り散り
取り急ぎ忘れ去るため
現像された写真を一通り眺め
やがて鋏で切り刻み廃棄
溜息ばかり煙じみて
路頭に迷う穀潰し
落伍者、負け犬ほど大きな声で鳴く
二つ前の季節に落とした詩を
今更になって拾い、読めば
耐え難い十六夜の下に寝転び
何かを思う訳でも、感じるわけでも
はたまた、感傷に浸るわけでもなく
寝不足の目で、赤いまま
鉄粉を噛み締めて月を見上げる
詩は、まだ俺の中にあるのだろうか
微かな寝息に耳を澄ませば
脈動する心臓の音、一陣の風
潮の香りに囲まれて、草の揺れを吸い込む
言葉が溢れて、止まらない
脳が分裂して、それぞれで活動を始める
葛藤する意識が刮目する目論み
巻尺を吸い上げて計るあれこれ
変態じみた嗜好も狂人の呟きも
混ぜ込んで織り成せ
本能に従い、万物に抗え

#詩 #自由詩 #現代詩 #ポエム #100日詩チャレンジ #note文芸部 #37日目

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