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そこにいる人

人並みに忙しい毎日を送る
通勤時にはカーナビで
最低限のニュースを見て
思うところあって
考えることもままある
才能もある著名人の自殺と
飲酒運転の車に轢かれた女子児童と
死刑が執行された殺人事件の犯人の
死は、それぞれ違うだろうが
はたして、何がどう違うのか
わからないまま、社員駐車場に車を停める
昨日、ここからいなくなってしまった
多くの人たちの分まで強く生きようと思うほど
ぼくはできた人間ではない
だけど、今日も働く
働いた分だけお金を得て
働かなくても空く腹を満たす
日々、寝て、遊んで
日が変われば
また制服に着替えて
働きに出る
扉を開ければ
眩しいほどの生活が
そこにはあって
例えば、ぼくは挨拶をする
接客をして、発注をかける
データを入力して、メールを送る
社会の一部になるつもりなんてなくても
たしかに、そこにある日常に
街に、溶け込む
ごくごく平凡な一市民として
遅かれ早かれ、いつか死ぬ
その時まではここにいる
君がそれを、知らなくても
僕が、君をまだ知らないのと同じで

#72日目 #自由詩 #現代詩 #詩 #note文芸部 #100日詩チャレンジ

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