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ふくらみ

泥濘に救われる足
吐く息は蒸発して白く
まぶたの裏で閃光が瞬き
遅れて痛みがやってくる
コピー&ペースト的日常
100円ライターの火花が散って
濡れたうなじをあたためる
ユングは寝言で「イク…」と言い
県道は赤く渋滞
血管の中の酸素が泡立ち
思い出にすらならない記憶が
心臓に飲まれて熱になる
群青と灰塵の境い目で君は、
……………。
針のように雨が降っています
落ちてガラスの破片が砕けて
病気、疾患、症候群の顔色
神と獣が宅飲む季節
大罪倦む布団の裏にて
鬱気質の少女の黒目の奥に見る
雨の学校、玄関の傘立て
びしょ濡れのローファーと
クラスメイトの笑い声
遠く連なる点が滲んで線になる
スカートの裾から冷える季節の淵で
影絵の狐は口づけを交わす
すべてが理にかなっているとは思わない
精子と卵のカリエス
煙の匂いに目が沁みる
触れないでください
抵抗しないで
この体を一人にしてください
私は、私の写真を待つ
写真の中の私は笑顔で
私の写真を持っている
私は、私はどこにもいない
今夜、繭を殺します
誰にも見つからないように
透明な流れに沿って
腕を、月に浸すように
翳して


#77日目 #詩 #自由詩 #現代詩 #ポエム #note文芸部 #100日詩チャレンジ

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