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定期試験問題におけるちょっとした工夫③(2019年6月30日)

 今回は、先の2回の記事の続きになっておりますので、まだご覧になっていない方は以下をご確認ください。

 さて、先の定期考査で扱った『古今著聞集』の「小式部内侍が大江山の歌の事」の応用・発展的な記述問題として、三題の説話との比較をさせました。それらはいずれも『今昔物語集』から引用しましたが、「紫式部の父、絶妙の詩によって念願の国守となる」(巻二四-三〇)と「全裸になって追いはぎを笑わせ、危機を逃れた役人」(巻二八-一六)と「変装した自分の妻に言い寄り、なぐられた軽薄男」(巻二八-一)です。

 記述問題で頭を悩ますのは採点基準・評価基準です。「小式部内侍」の説話との共通点を指摘してそれについての自分の考えを述べなさいとして、どのような共通点が、どのような考えを軸にして見いだせるのか。
まずその前に記述問題の字数制限ですが、もともと国語や古典への苦手意識の強い生徒たちなので、10行の罫線だけ解答用紙に記載しています。もちろん記述した量も採点の対象なのですが、満点や満点にもう少しの解答で分量が足りてないということはまずありません(残念ながら、10行すべて埋まっていても点数をあげられない答案もわずかながらあります)。

 共通点はすべての説話でなくても構わないという条件は付けました。ただし、授業で学習した「小式部内侍」と三題の説話のいずれかとは共通点を見出した上で、意見を述べさせています。
さて、私が想定していた共通点は以下のとおりです。

・和歌や漢詩(うた)で出世する
・才知で難局を切り抜ける
・世間の評判となる行い
・世間の評判を落とす行い
・女性のたくましさ
・男性の身勝手なふるまい
・言動をわきまえる
・子が親から才能や資質を引き継ぐ
  ※最後のひとつは生徒からは出てきませんでした。

 これらの共通点を二つ以上押さえ、それに関する意見を述べればおおよそ、5点満点で4点・5点の答案になっていました。上記のような感じで共通点をただ書いただけであれば1点、どの説話とどの説話のどの部分が共通点なのかまで書けていたら2点、それが二組で4点、さらに意見があればプラス1点です。

 プラス1点のできた意見は、説話が教訓を含んでいるものであること、現代とはポイントが違っているが説話が当時の人々の憧れるサクセスストーリーを集めたものであること、歌や漢詩の役割や存在意義は現代とは異なり大きな力を持っていることなどです。

 実を言えば、このような記述問題を作った最初の理由は、他の問題の部分が易しすぎて早く解き終わってしまう生徒が少なくなかったため、試験の解答時間を稼ごうというものでした。しかし、二年前の高2で採用したこの形式が、最初は“点が取れない”という理由で不評だったものの、のちには“どんな問題が出るのかな”“高得点を取ってみたい”“問題になった文章がよかった”などというので、作る方も解く方も何となくおもしろくなってきたという事実があります。

 採点は確かに大変です。しかし、採点基準をシンプルにすれば何とかなります(生徒からのクレームもほとんどありません)。これからも知恵をしぼって、いい意味で生徒の期待を裏切るような作問をしてみたいと思っています。


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