2013年 夏の学会・研究会のまとめ⑮〔廃刊メルマガ記事より〕(2014年8月10日)
現在、昨年夏の学会・研究会のまとめをしています。第15回は、駿台研究所主催で駿台市谷校舎にて実施された〈2013夏期教育セミナー〉の最終回です。
白鳥永興先生 「古文をめぐっていろいろ考えてみる―室城先生とともに―」
*今年度(平成二十六年度)の入試問題から
『枕草子』の「心もとなきもの」からの出題です。「心もとなし」の意味は、「いらいらする。じれったい。まちどおしい。」です。
いつしかと待ちいでたるちごの、五十日・百日などのほどになりたる、行く末いと心もとなし。
傍線部の「いつしか」をどう訳出すればいいのか、4択で問う問題です。
この「いつしかと」について「と」に注目すると、
「いつ(何時)しか。」と
のように、「いつしか」をかぎかっこでくくることのできる心内文です。
出てくるのを待っていた子どもに対して「いつしか」と思っているのですから、「いつしか」の下に来るはずの願望が省略されていると考えます。よって、「早く~してほしい」の形になっている選択肢が正解のはずです。
A 早く大きくなれと
B 大きくなるのが早すぎると
C いつの間にか大きくなったと
D 気がつかないうちに生まれていたと
以上四つの選択肢ですが、消去法でかろうじてAが選択できるのかというところの作問だということです。「大きくなれ」は正確には願望の表現ではないので、受験生を迷わす問題であると言えば問題です。
さらに、本文の文脈からは「疾きこそは」(「疾きことこそはよけれ」の省略)となるべき本文が「時こそは」となっており、直接の出題部ではないものの、やはり気になる作問であると室城先生は指摘されていました。
この入試問題は、都内の難関校とされている学校の一つが出題したものであり、入試問題の正確さや一定のレベルの維持といった問題もさることながら、古典教育に警鐘を鳴らすものであると言えるでしょう。
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