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2013年 夏の学会・研究会のまとめ⑭〔廃刊メルマガ記事より〕(2014年6月22日)

 現在、昨年夏の学会・研究会のまとめをしています。第14回は、駿台研究所主催で駿台市谷校舎にて実施された〈2013夏期教育セミナー〉の第4弾です。


 白鳥永興先生 「古文をめぐっていろいろ考えてみる―室城先生とともに―」

 *「らむ」の出題例

  二〇〇七年センター、『兵部卿(ひょうぶきょう)物語』からです。

 初霜も置きあえぬものを白菊の早くもうつる色を見すらむ

 本文に付された問いは、この和歌の説明を(センター試験ですので)五つの選択肢から選ぶようになっています。

 各選択肢において、和歌の部分を直接訳した部分に注目すると、「どうして~いるのだろうか」になっているものが二つ、「どうして~たのだろうか」が一つ、「~ているようだ」が一つ、「~してしまったようだ」が一つです。

 解答の一つ目のポイントは、本文の和歌に疑問語がなくても選択肢にはあるというところで、正解の候補から外してはいけないということです。そして二つ目は、「らむ」が「話し手の、現在そうなっているという推量の判断・認識を表す」という点です。和歌の前半を推量の根拠として、どのように訳出するかを判断します。

 すると和歌の直前の本文に、「姫君」が「さまざまの絵など書きすさみたる中に、籬(ませ=垣根のこと)に菊など書き給うて、「これはいとわろしかし」とて、持たせ給へる筆にて墨をいと濃う塗らせ給へば」、「按察使(あぜち)の君」が、問題となっている和歌をその絵の「傍ら」に「いと小さく書き付け侍る」とあります。

 正解は、「描いた白菊を姫君がすぐに塗りつぶしてしまったことに対して、「初霜もまだ降りないのに、どうして白菊は早くも色変わりしているのだろうか」と、当意即妙に詠んだ。」という選択肢になります。

 助動詞は難しいといえばそれまでですが、たくさんの用例に触れて、自分で現代語訳を考えるというのが大事なのだと思います。古代の日本人の思考に迫ろうという好奇心、心意気を忘れないでほしいです。それが、正しい訳出につながると信じています。

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