ER配属でもないただの薬剤師がACLS受けてきました

先週の土曜日にACLS講習(1日コース)を受けてきました。
これまたいろいろ思うところがありましたので、いま書きなぐっています。
ACLS講習ってどんな感じなのか雰囲気が知りたい方もいるかと思うので、私の受講者目線で講習の内容を記録します。

会場は市町村が市民団体に貸し出しているような部屋で、Max10人までしか入れないような程度のスペース。
読む人によってイメージがまちまちになりそうだけど、地元の公民館にそういうスペースがありますでしょう。地元の絵画サークルや合唱サークルなんかが借りて、外部から講師呼んで練習してるようなスペース。そういうスペースをイメージして下さいな。

そこに朝9時ころ集合。
俺の受けたときは受講者4名、インストラクターの先生2名だった。

まず最初に自己紹介。
「事前アンケート」として受講動機や趣味などを提出したんだけど、それの内容をなぞって共有する感じ。だいたい5分×4人くらいの時間。
俺の他には救急室のNsさん、元救急で今は一般病棟のNsさん、看護学生さんという構成だった。(着席順)

まず最初は動画の学習。
講習の前日までにAHAが作成したe-learningをみな受けてるんだけど、その大事な場面の振り返りみたいな感じ。
30分くらいかな、動画を見てからはBLSスキルの確認みたいな実習に移った。

ここで、この界隈ではお馴染みの「例の人形」が登場する。上半身しかなくて、ちゃんと5cm胸骨圧迫するとペコッと音がなるやつだ。
ACLS講習ではBLSをマスターしている前提なので、すごくあっさり。

BLS講習で半日かけた内容を、「バッグマスクによる換気」と「胸骨圧迫」の手技だけさらっと振り返る。
俺も含め、みんなサラッとクリアした。BLS講習受けといて良かったw受けてなかったら俺たぶん危なかったわ。

(俺が受けた今回の講習はBLSプロバイダー資格不要だった。でもBLSはできる事が前提のコースなので、日常業務の中で胸骨圧迫とか全然やらない人はやっぱりAHAのBLSプロバイダーを取ってからACLSに挑んだほうが良いのでしょう。)

BLSの振り返りが終わったら、チームダイナミクスの話になった。
胸骨圧迫の割合(CCF)を増やすにはどうするかとか、チームリーダーの役割とか、自分の限界を認識して無理そうなら早急に支援を求めるべきとか、そういう講義の時間だった。

俺はてっきり、「こういう波形がモニターに映ったらどう動くか」とか、「急変時の薬剤選択は…」とか、そういうTHE・座学といった講義が来るかと思ってた。なのですごく意表を突かれた。
大学の授業で半期の講義でテキスト一冊終わらせるなら、「ここらへんは各自でテキスト読んでおいて」で済まされそうな領域だと思っていた。

ここで13時くらいとなり、昼休みに突入する。
昼休みといっても各自が持ち込んだメシをパクつきながら講義動画を視聴する、ガチガチのガチのやつだ。メーカーが弁当を配らないランチョンセミナーだ。
もちろん事前にその通達はあったので、俺も含め「ながら食い」できやすそうな食事を皆さん持ち込んでいた。

13時半くらいから実技開始。
それぞれの参加者の仕事内容に合った状況設定で、急変からの心停止で蘇生処置を始めるというシナリオの実習が始まる。
患者さんの状態がどうなるかは前もって提示されてはいない。
でもゆくゆくは必ず心肺停止、からの心マ&人工呼吸といったBLS、からの挿管や薬物投与といったACLSになるシナリオのようだ。

今回の参加者は4人なので、これを4回繰り返すことになる。
発見者はリーダーとなり、応援にきたスタッフに指示を出す役割となる。
俺はそれすらも理解できてなく、トップバッターとして名乗りを上げたけど発見者がリーダーになるという設定をよくわかってなくて、「え、えーっと…えーっと…」を繰り返して俺の番が終わったww
トップバッターだから許されるハプニングでしょう。

そのほかに記録係という設定があり、これは事前に割り振られている。
記録係の仕事は、
X分 VFにて胸骨圧迫開始
X+2分 除細動実施、不変
X+4分 アドレナリン1mg投与
X+6分 除細動実施、ROSC ただちに気管挿管
…みたいなことを記録する。
急変時の患者カルテに書かれてるアレだ。
実際に認められた波形やバイタルの状態、実際にやった医療行為を医療言語にして書くのはすごく難しいんだというのを実感した。

ほかの2人は応援スタッフだ。
発見者の「誰か来て下さい!」に反応して駆けつけ、発見者(リーダー)の指示出しに従いつつ、リーダーの判断がAHAのアルゴリズムから逸脱してたらやんわり指摘する役割だ。
俺はAHAのアルゴリズムとか見ながらでもよくわかってないし、とりあえず心マやら人工呼吸に専念してたら「それなりにがんばった」みたいな評価がもらえそうな空気だったので、4セット中2回やる応援係が一番気持ちが楽だった。

リーダーだったら挿管もするんですよ。
手技は聞いて練習する時間もあったけど、現場ではここで一発で決めなければ換気できてない時間が長引いて患者さんの予後がクソ悪くなるというシーン、いくら「例の人形」相手でもテンパるよ。
しかも「例の人形」、無駄に気道と食道があるんだわ。
気道を探してそこに挿入しないと、適当に入れると食道に管が入るという地獄ww

やってみて後で思ったのは、講義でもあった「自分の限界を認識する」ってやつだ。
挿管無理だと思ったらインストラクターをアドリブで「エマージェンシーコールで駆けつけた上級医」に見立てて、「先生、自分これうまくやれないんでお願いします!」って声かけるのが一番正解に近かったんだと思う。

俺が発見者(兼リーダー)として担当したシナリオ
『新規入院の患者さんで、持参薬の確認をしようとして病室に行ったら意識がありませんでした。』

俺「○○さん、こんにちはー。…あれ?なんかおかしいぞ?」(AHAのテキストでは第一印象で異常を感じるかどうかっていうのも重要とされている)
俺「○○さーん、どうしたのー?わかるー??目あけてーー???」
俺「(頸動脈を触知して独り言)脈拍ナシ!(呼吸を確かめるフリをして)呼吸ナシ!」
俺「(独り言)胸骨圧迫、開始!!」
俺「(胸骨圧迫しながら)誰かーーー!!来て下さい!!手伝って下さい!!」
応援スタッフ×2「どうしました??」

…ここでスタッフに的確な用語を使って情報共有できるかというのも重要な評価項目だ。

俺「心肺停止です。モニター装着、エマージェンシーコールと救急カートの用意、あとAEDをお願いします。」
俺「服薬指導で訪室したら意識がなくて」
俺「頸動脈触知できず、呼吸もないので胸骨圧迫を始めました」
応援スタッフ「おかのした」

(2秒くらいで)
応援スタッフ「AEDきました」
応援スタッフ「救急カートからバッグマスク取りました」

俺(ほっ…。あとは何かAHAのアルゴリズムを逸脱しても、応援スタッフ×2(中の人がNs)が来たからには間違いも正してくれるだろう。これでステージクリアだなwwwww)

応援スタッフ「十二誘導も用意しますか?」
応援スタッフ「AED貼ります!アドレナリン1mgも念のため用意します!」俺「お願いします!!(ぶっちゃけ何が何だかわからないけど、AHAのアルゴリズムを先読みして気を利かせてくれた応援スタッフさんありがとうございます!!!!!)」

その後、応援スタッフ×2はAED係と胸骨圧迫係に分かれます。
AEDを装着してくれた応援スタッフ「リズム解析、ショック適応!離れてくださーい!心マは続けててくださーい!」
AED係「(AEDの充電完了したので)押しまーーす!みんな離れて!!」
AED「バッチコーン」
AED係「胸骨圧迫続けて下さい!」
胸骨圧迫係「おかのした」
AED係「波形変化!洞調律のようです!頸動脈は??」

俺「(あ、ああ。俺に言ってるんだな。)(頸動脈に指を当てる。脈が触れたら音が鳴るというお約束をしていたが音は鳴っていない)」
俺「頸動脈、触知できません!」

胸骨圧迫係「PEA(無脈性電気活動)ですね!胸骨圧迫を継続!」
AED係「おかのした」
数秒遅れていちおうリーダー役の俺「おかのした!!!」(気合いだけはあるアピールwww)

胸骨圧迫が続くなか、俺はただぼーっと立ち尽くしている。
記録係「そろそろ2分です!アドレナリンいきますかね??」
俺「お、おう!!アドレナリン1mg用意お願いします!!記録係さんのタイマーに合わせて行きまーす!!!」(まじかここアドレナリンいくタイミングだったのか…ふぅー危ねぇ危ねぇ…記録係さすが!あざっす!!!)」

…実技はこんな感じ。
4人で役割を交代しつつ、一通り終わったら時はすでに16時30分だった。

=====

次は先ほどの実習の反省点を洗い出して、いよいよのガチもんの実技試験に入っていくとのこと。
状況設定や患者さんの状態は一人一人違うけど、また4セットやってリーダーやら記録係やら応援スタッフ×2回を一通り経験する。

さっきの練習は、誰かが何か間違ったら(AHAのアルゴリズムから逸脱していたら)インストラクターによる方向修正が入った。
だけど次にやるのは試験だからインストラクターからのヒントはない。困ったら受講者4人で相談して判断するようにという教示がなされる。

試験は最初にまず俺が発見者かつリーダーをすることになった。
いざ試験!!試験と言えどもテキストの付録のカードは参照してよくて、付録のカードのなかからこの状況に最適なアルゴリズムを選択できるか(&その後の対応はさんざん練習してきたけどそれもできるか)を確認するための試験なのだという教示があった。

俺が発見者やその後のリーダーをやるシナリオの状況設定
『いつもの服薬指導をしようとして訪室したら、モニターがHR180を示していた。』
いや実際には看護師さん呼んで俺は邪魔にならないよう奥にひっこむ案件かもしれないけど、そんなこと言ったらいつまでも何もわからないし学ばないままだろうな。その設定でやってみるか!!

実技試験開始。
俺「○○さーん?」
患者役(例の人形の近くで声をあてるインストラクター)「あーい??」
(???元気なのかよ!!???)

俺「ねぇいま息が苦しかったり体がだるかったりしない?」
患者役「いやー?別になんともないけどねぇ??」

…なんだこのシナリオは??
患者は普通じゃないか??これどうしたらいいんだ??
普段の病棟業務だったら、緊急性なさそうなんで担当看護師さんをつかまえて話を聞くけど、これたぶんそんなモタモタやってたらやばい話なんだろうな。たぶん。全然わかんないけど。

俺「お胸苦しいとかない?息が苦しいとかも。」
患者役「はぁー、別に大丈夫だけどね。」

…AHAの頻拍のアルゴリズム的には、低血圧やショックの兆候があるかどうかでその先の処置が分かれるそうだ。

俺「ちょっとねー、念のため血圧測りましょうか。」
血圧計「110/60デス」
普通すぎるよな。心電図の測定を待とう。

心電図「QRS幅も0.12sec未満で、異常ありません」

俺(アルゴリズム的にこれはアデノシン投与か…?)※後ほど振り返ります
俺「アデノシン6mg静注お願いします!投与後は生食シリンジでPushしてください!」
応援スタッフ「おかのした」

アデノシン6mg投与後
俺「どうですか?」
患者役「あー、苦しい、あー、あー…(クタッ)(意識消失)」
俺(それっぽくなってキターーー!!!wwさっきまでこの後の展開が全く読めなくてきつかったわwww)

俺「頸動脈触知ナシ!自発呼吸ナシ!心マ開始!(その場にいた応援スタッフに対し)救急カートの用意と院内エマージェンシーコールをお願いします!」

…居合わせて集まったという設定のスタッフたちに、ひたすら心マを交代してもらってやり続けるよう依頼する。
最後にCCF(胸骨圧迫の割合)が示されるので中断するわけにはいかない。
その後はAHAのアルゴリズムに従って、必要ならばリドカインを投与しつつ、胸骨圧迫で80%以上の時間を出すことが求められる。

エマージェンシーコールを聞きつけてやってきた上級医というテイのインストラクター「どうしました?」
俺「訪室したらHR180、自覚症状なし、血圧も110の60と正常でモニターは洞調律、アデノシン6mg投与したら急に意識レベル低下して心肺停止しました。胸骨圧迫しつつ4分ごとにアドレナリン投与しました。除細動は適応 の波形ではなく行っていません。」(今までの経過を医療用語で要約して伝えるのもまた試験)
上級医「了解っす。んじゃここでやっててもしょうがないし、ER室に回しましょうか。後はやっときますんで。」

上級医という役割を終えたインストラクター「はい、これで終了です。お疲れ様でした。」
インストラクター「…」
インストラクター「合格です。」

このあと筆記試験(持ち込み可)も控えてるけど、正直ここで「おっしゃ取ったどーーー!」って思った。

※の部分の補足
後になってテキスト読みつつこの試験を振り返ると、このシナリオならアデノシン行く前に迷走神経刺激だったかもしれない。迷走神経刺激のやり方はいろいろあるそうだけど、シリンジの注入口の方をくわえてもらって(もちろん針はつけないままで)、「押し子を奥に押しやるように息を『ふぅーーー』ってして下さい」って教示するのが一般的だとか。

その後、記録係もやって応援スタッフ×2回もやって、全員の実技試験が終わったのは20時過ぎだった。実技は全員合格した。

そのあと実技の補足説明や講評があったりして、それから筆記試験で、全部終わったのが21:30ころ。筆記試験はテキスト持ち込みOKなので、事前に一通り読んでどこらへんに何が書いてあるのかがわかってたら問題なかった。

こうして、何が何だかろくにわかってないままそれっぽいことをやってた俺氏もACLSプロバイダーを取得することができた。

俺、資格マニアといえども、こんなショボい技量で資格取得とか、気を遣っていただいたっぽくて資格自体はなんか悔しい。

…そう思いながらネットサーフィンしてたら、あるブログのなかに

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あるACLSインストラクターがこう言っていました。

「インストラクターは受講者を全員合格させることが使命。
それがいつか患者の救命につながるから。」

ACLSコースの目的は、一人でも多くの医療従事者が専門知識と技術を持ち、一人でも多くの人の蘇生成功へつなげること。そのスキルは決して医師や救命ナースのためだけではなく、医療に関わるすべての方のためのものだと思います。

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という記載を見つけ、資格マニアの俺は大反省した。
ぶっちゃけ動機としては資格取得が目的だった。興味を持って勉強したことが形に残るからっていう、ただそれだけの理由。
それを業務にどう活かすかとかはあまり考えてこなかった。

でも俺が今後もし病棟で急変に出くわしたとき、ACLSプロバイダーとして学習した事項を実践しようと努力して、もちろん空振ったりうまくいかないこともあると思うんだけど、そういうのを繰り返して真のACLSプロバイダーになっていくのかもしれないな。

資格取得はただその入り口に立ったってだけなんだよね。

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