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安心感が美味しさを助長する 【MAMIE GATEAUX】 と、安全と日々の幸せの間をとる

私がこのお店の存在を知ったのは、今までの生活ががらっと変わった2011年。
休むことが悪とまではいかないが、働くが正義と思っていた生活が終わり、ゆるっとした生活を始めた年だった。

パリにあるこのサロン・ド・テは、フランス好き、お菓子好きなら知っている有名店。

マミー・ガトーとは、フランス語で「お菓子のように甘いおばあちゃん」と言う意味があります。
宝石のような美しいケーキも、最高級のお茶もありませんが、ホッとくつろげる空間を提供できたら、と思っています。
おばあちゃんのうちに、お茶を飲みに行く感覚で、気軽にお越しください。
ときは流れても、ささやかでも、ずっと存在しつづけているようなお店でありたいと願っております。

何で見たのか覚えてないけれど、私が作りたいのは正にこれだ、と思った。
(もう一つ衝撃を受けたものがある。ピエール・エルメのイスパハン。衝撃は受けたけどこれを作りたい、とはならなかった。)

煌びやかなパティスリーも好きだけど、やっぱりあったかい笑顔のある茶色いケーキばかり並んでいるお店により惹かれる。

素朴だけど食べるとホッとする美味しさで、流行り廃りのない味。

それは生活に溶け込むお菓子であり、今でも常に考えていること。
粗悪な素材は使わない。できれば有機が良いが、たまにしか買えないくらいの値段になってしまうなら諦める。
中途半端ではあるが、できるなら安全と日々の幸せの間を取りたい。



学生時代に2度ほどパリには行ったが(この頃お店はまだなかった)、このお店を知ってからは行けていなかった。
一昨年留学を決めてから、帰りはパリに寄ってここへ行こうと早々に計画した。

小麦粉のお菓子を食べられなかったとしても、それでも雰囲気だけでも味わいたいに行きたかった。

現地に高校時代の友達が住んでいるので一緒に行って一口もらおうと思ったのだが、一緒には行けなかった。折角なら彼女も行ったことのないグルテンフリーのお店に行った方が面白いだろうと思ったから。

彼女ももちろんここを知っていて、一時期手伝う、と言う話もあったらしい。オーナーが日本人なので、日本人の従業員も多い。


数日間一人で散策する日があった。
近くまで来たので(すぐメトロに乗る友達に言わせれば全然近くない、何キロか歩いた)お店にいってみた。昔みた写真のイメージしかなかったので、大きさにびっくりした。

まあまあ大きな通りの一角に堂々と店を構え、テラス席にもお客さんがびっしり。もっとこじんまりとしたお店かと思っていた。(知らないだけで移転とかしていたのかもしれない)
通りから中を覗いてみたが、ランチが終わる時間だったし、ケーキも見当たらず、席も埋まっていたので一旦諦めた。


翌々日、今度はオープン直後を狙って行くことに。
お店に着くと、まだほとんど客がいない。
どこでもいい、とムシューに言われたので窓に近い席につく。
中も思っていた5倍くらい広い。そして全てが上品で可愛い。

お茶の利用だと伝えると、ケーキが向こうに並んでいるからそこから選んで、的なこと言われたと思う。
片言の日本語を話せるようだったので、この中で一番小麦粉が少ないケーキはどれか聞いてみた。英語も交え(多分英語はそんなにわからないっぽい,
小麦粉って伝えるの難しいんだよなとこのたび何度も思った)さらに厨房に聞きに行ってくれて、ガトーショコラだと判明した。



できればコーヒーを合わせたかったが、6月の晴れたパリは暑いので、レモネードにした。通常の日本サイズより1.2倍くらいの濃厚なガトーショコラが運ばれてきた。んーやはりコーヒー飲みたい。冬に窓際で寒そうな外を眺めながら濃いめのコーヒーとともに食べたらホッと心が暖かくなりそうな味だった。もちろんとても美味しかったが驚きはない、でもそれでいい。安心感が美味しさを助長する。

人が入り始め、私も次に行きたい場所があったので長居せず出ることに。
またパリに来た時には来るだろう、それもそんなに後のことではなさそう、とその時は思っていた。



あっという間に年が明け、なんとなくお店の情報を改めてみてみた。

なんと、年末でお店を閉めていた!

友達曰く、従業員不足でオーナーも体力的にキツかったんではないかと。
決して売上の問題ではなさそう。

だってパリの人々に愛されているのが誰の目からもわかるくらい地元の人で席が埋まっていたんだから。


ほとんどない憧れや目標に似たような場所に、偶然にも最後の最後に行けて本当によかったと思った。


これからはブロカントに力を入れていくらしい。
それはそれで気になる。

パリにはまた行く、きっと行く。



あ、だからおばあちゃんのロゴなのか、と思った方、


全然関係ないんです。





あの時言葉にしたものを大切にしたかったので、前半は初めてお店を知った時に書いた自分のfacebookを元に加筆。

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